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|熊谷めぐみの小部屋|ART & ESSAY

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ディケンズの小説を題材に、気鋭のアーティスト達が作品を制作。熊谷めぐみによる小説案内、作品紹介エッセイとの競演により、ディケンズと現代作家が時を超えて出会います。
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#ねじの回転

熊谷めぐみ & 横井まい子|ART & ESSAY《10》|螺旋にとらわれて

 貧乏な田舎牧師の娘として生まれた、若い女性である「私」は、マイルズとフローラという幼い兄妹の家庭教師の仕事を得る。不安を押し切り屋敷に赴いた「私」は、兄妹の美しさに魔法にかかったように魅了される。家政婦のグロースの協力も得て、「私」の仕事は順調に見えた。ある日、幽霊の姿を見るまでは。  ヘンリー・ジェイムズが書いた『ねじの回転』は様々な解釈を許容する。作品のほとんどを占めるのは、家庭教師である「私」の一人称の語りである。若く、美しく、雇い主に憧れを抱きながらも、大きな不安

熊谷めぐみ & 優|ART & ESSAY《9》|美しき兄妹

 貧乏な田舎牧師の娘として生まれた、若い女性である「私」は、マイルズとフローラという幼い兄妹の家庭教師の仕事を得る。不安を押し切り屋敷に赴いた「私」は、兄妹の美しさに魔法にかかったように魅了される。家政婦のグロースの協力も得て、「私」の仕事は順調に見えた。ある日、幽霊の姿を見るまでは。  『ねじの回転』は1898年に発表されたヘンリー・ジェイムズによる小説。田舎から出てきた若い女性が、後に雇い主となる紳士に憧れの気持ちを抱き、エセックスにあるお屋敷で、彼の甥と姪にあたる少年