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2022年ベストシューゲイザー4選

あけましておめでとうございます。
こんにちは、そめいです。
2022年もたくさん音楽を聴きました。ジャンルレスに新譜を追っていたと思いますが、その中でも特にシューゲイザーやドリームポップをよく聴いていた気がします。そこで、今年聴いて良かったシューゲイザーのアルバムについて少し感想を書いてみました。(順不同)



1.what is your name?
『the now now and never』

トロントを拠点に活動している 2021の別名義 what is your name? による1stアルバム。2021名義の作品ではブレイクコアを主軸としていて、同年リリースされた『reverie』はドラムンベースやジャングルにチェンバーポップを取り入れ、涼しげなストリングスを軽快なブレイクビートに落とし込んでいます。'’あの夏''の情景が思い浮かぶようなノスタルジー溢れる作品になっています。

そして、このアルバムは彼のそのエレクトロニックな面も踏襲しつつ、そこに粗いギターサウンドや浮遊感のある轟音シンセウェイブという、シューゲ / ドリポ要素を散りばめたブレイクゲイズで、エッジの効いたギターに煩く鳴り響くドラム、所々にある日本語サンプリング(Absolute area『遠くまで行く君に』の歌詞をサンプリングしたM5「you can't turn back time」など)や談笑する声が学生時代の郷愁を誘い、過ぎ去ったはずの青春、架空の記憶を喚起させます。
こういうの本当に堪らないですね、、最高。

特にParannoulファンは、さまざまな''青い''成分を含んだこのアルバムに浸ってしまうこと間違いないと思います。

I'm not Parannoul nor Asian Glow(lol)

彼のインスタグラムより


2.Kraus『Eye Escapes』

ブルックリンを拠点に活動しているWill KrausのソロプロジェクトKrausによる最新作。上半期ベストに入れるか迷ったアルバムの一つです。前作『View No Country』に引き続き、彼はシューゲイザーと轟音ギターという確立されたセオリーを打ち壊し、ギターレスでシューゲイズサウンドを再構築しています。

Sigur Rós
のような耽美的な空気感もありながらも、Mogwaiのようなヘビーなギターノイズも併せ持つ(ギターレスだが)轟音サウンド。彼が構築した轟音のフィールドから逃れることはできないと言わんばかりに猛攻な音の弾幕が張られ、その耳を突き刺すような轟音ノイズと親和性のある幽美なウィスパーボイスが眩い音像へと変容させていく。なんだか聴いていると涙腺が緩んでしまいます。

これから彼はLovesliescrushing系譜のアンビエント・シューゲイザーにもなり得るのではないか(いや、なってほしい!)とM4「Mistake」を聴いて思いました。

彼のプレイリストにBrian EnoGrouperEluviumBowery Electricがいるのも納得かもしれません。


3.Bigger Boot
『A Fork or My Fingers』

オーストラリア / メルボルン在住の詳細不明のアーティストBigger Bootによるデビューアルバム。年間ベストアルバムにも選んだ作品です。最初に聴いたとき、僕の頭の中はクエスチョンマークで溢れ返りました。ローファイエモシューゲイザーノイズ・ポップテクノなどのあらゆる諸要素を斬新に組み上げた壮大なサウンドスケープに圧倒されてしまった。何が繰り広げられているのか、次は何が起こるのか、全くわからない。予測不可能なところからさまざまな音が飛び出し、襲いかかってくる。その音は鋭く尖っていたり丸みを帯びていたり、遅くも速くもあったり、楽観的でありながらも悲観的でもあったりと多種多様で、まるで数多の音が成す巨大な生命体のように蠢いています。

なんか乃木坂5期生みたいです(?)。全員が整列せずに突出して暴れまくっているけど、全体としての形は崩さず、美しく動いている感じ。

そして、その音の共同体は、緻密に計算された静と動のコントラストが巧みに機能し、その中にある喜怒哀楽の感情を聴き手に与え、カオスと化したサウンドが濁流の如く流れ込んでくる。まさに狂気。

現行シーンで例えるならblack midiがエレクトロニカ方面で演ったら…みたいな雰囲気で、Weatherday(別名義 Five Pebbles)などに近いのかもしれません。

track 2 contains elements of a demo by tirestires
track 9 contains a sample of ‘ogi no mato’ by the ensemble nipponia

彼のBandcampより

また、このアルバムはほぼ途切れることなく曲間が繋がっていることや、日本の琵琶を用いた伝統音楽のサンプリングがされていることで、より一層カオスで濃厚な作品になっていると思います。

昨年は、Asian Glow『Stalled Flutes, means』Nouns『WHILE OF UNSOUND MIND』、国内だとmoreru『山田花子』などのエモバイオレンスやディストピア的要素のある作品が多かった印象がありますが、この作品も所謂「第5波エモ」あるいは「ポスト・エモ」を語るにあたって、欠かせない一枚になってくるのではないでしょうか。

4.Launder『Happening』

Ghostly InternationalからリリースされたJohn CudlipによるプロジェクトLaunderのデビューアルバム。もうジャケ写の雰囲気からしてシューゲイザー感満載のアルバムなのですが、一聴して名盤を確信しました。これは本当に最高のシューゲイザーをやっています。

90〜00年代のローファイやエモを軸に展開される叙情的なギターノイズと甘美なヴォーカル。希望と絶望を同時に表現するようなエモシューゲイズで、初期Smashing Pumpkinsのグランジ的な重みも持っているものの、今作のプロデューサーDay Waveのドリームポップぽい柔らかさもあるといった趣でとても聴きやすい。

また、一曲一曲から得られる''エモ''がすべて異なる気がします。
例えば、DIIVZachary Cole Smithや女性SSWのSokoをゲストに迎えたM5「Become」で、どこか懐かしさを覚える青々とした情景が映し出されてゆく…と思いきや、M6「Beggar」ではDusterにも通づるような、諦念を抱きつつも怒りや反骨精神が表出したソングライティングで、なんというか、エモに対して一辺倒になっていないんですよね。すごい。


MBV
NirvanaBlurなどの錚々たるレジェンド達が生きた90〜00年代にタイムスリップしたかと思わせるサウンドでもあるのですが、決してリバイバルの一言では終わらせない新しさとエモを持ち合わせていると思います。いつ、どこで聴いたとしても、目の前の光景に13色のフィルターがかかり様々な思いにさせてくれる、そんな一枚です。日常を彩る名盤の一つとしてこれからも愛聴すること間違いないでしょう。


以上4作品でした。
読んでくださりありがとうございます🙇‍♂️

2022年ベストトラックで締めたいと思います。
また書きます。

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