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お醤油を訪ねて三千里
こんにちは、さちこです。普段は、外国の方に第二言語としての日本語を教えています。どうぞよろしくお願いします。
大学進学のために実家を出て入った学生寮は、1室2人の定員だった。
各フロアは8室で、フロアごとに共同のトイレ・洗濯乾燥機・ガスコンロ・冷蔵庫があった。
寮食は、当日朝までに食券を出せば、夕飯のみ食堂に準備された。
共同のガスコンロ・冷蔵庫が用意されていたのは、
それ以外の食事などを自分で用意できるためにである。
入学当初、3年生の先輩とドキドキの同室だったのだが(結果的にはこの先輩にはこちらが恐縮するほど良くしてもらった)、
2、3ヶ月経った頃に同じフロアの2年生がアパートに引っ越したため、
その部屋に残った1年生と私が同室となり、
私と同室だった3年生の先輩は1人部屋になることとなった。
定員は1室2名だが、慣例として卒論や就活で大変になる4年生あるいは入寮者数によっては運が良ければ3年生から、1人部屋にしてもらえた。
1年生同士でしかも同じ学科という、お気楽な2人部屋になってからは、
食事当番を決め、簡単な昼食や夕食を作って食べるようになった。
同居人はともかくとして、私は小中高の調理実習と母が料理するのを手伝った程度の経験値しかなく、簡単なものしか作れなかった(笑)
ある日、いつもと同じように作ったはずの料理の味がおかしかった。
いつもと同じ材料で、いつもと同じように出汁をとり、
いつも母がしていたように味付けをしたはずなのに、
慣れ親しんだ味ではなかったのだ。
「おかしいな〜」と思いながら、
まぁ、自分のことだから、何か間違えたんだろうと、忘れた。
ところがである。同じようなことが、また起こったのである。
どう考えても、いつもと同じように作った、はず、である。
たまたま実家に電話をし、母と話している時に思い出し、
材料や作り方の手順を確認すると、やっぱり合っている。
納得がいかない私が母に事情を説明すると、
「お醤油が違うんじゃない?」と、言われた。
「お醤油!?」である。
実家の近くの醸造所で作られたお酢やお醤油を買っているので、
市販のとは味が違うのかもと言うのである。
確かに、入寮時の荷物に入れてきたお醤油がなくなり、
近所のスーパーで買ったばかりであった。
引っ越しの時に、「お醤油やらなんやらなくなったら言いなさい、送ってあげるから」と言われていたが、送料をかけて送ってもらうなんてと思い、
こちらで買ったのであった。
しかも、学生の身、一番安いのを選んで買った。
お醤油に、それほどの違いがあるなんて、思わないもの…。
しばらくして母から、お醤油やお酢やらを入れた荷物が届いた。
それで作ったら、私の腕でも、いつもの慣れ親しんだ味に戻った。
入学当初に同室だった3年生の先輩は、買い物に行くと、
1つ1つ原材料名を確認して買う人だった。
母が送ってくれたお醤油の原材料と、
私が買った一番お安いお醤油の原材料は、ちょっと違っていた。
それからは、買い物をするときは、
先輩と同じように原材料名を見て買うようになった。
お醤油などの調味料は、広島の醸造所のものと全く同じ味とはいかないが、
似たような味のものを探すようになった。
私にとっては、たかが調味料、されど調味料である。
ということを、髪を切りに行って、美容師さんと話していて思い出した。
知らんがな。
(お読みくださり、ありがとうございました。)