夜明けに気づかないふりをする話
タイトル通りならよかったのだけれど。
もう知ってる。
夜はいつか明けてしまうってことぐらい、嫌でも。
いつ夜の終わりを感じるようになったのか分からない。
朝まで起きていたって眠るまでは夜だった。いつも見ることのない空を見て、一人静にぼうっと感情と情景を享受して布団についたあの日は朝になっても夜の荘厳さを思った。きっとどうやったって見えない景色が夜だった。私にないもの、何もかもから離れた場所にあるもの、静けさと安息とざわめきと興奮と寂しさの象徴。私にとってすべては夜だった。
いつからか気づけば朝になっていた。
楽しいことも嬉しいこともそれなりにあったし、いいことも悪いこともあった。幸せなこともそうでないこともそれなりにあったし、満足はしている。ただ、心のなにかがどこかに行ってしまった。
泣いて、泣いて、夜に染まって。
それができなくなっていた。
夜がどこかに行ってしまった?
何も分からないまま、流されている。こんなものだという気持ちとこれでいいのかと嘆く気持ちが同居している。それでもうまくやっていることに苦しみすら覚える。
何かに急かされるように時間を食いつぶしている日々はきっとギャンブルに似ている。この先のこと全てから目を背けて、明日があるって確証もないことに縋っているんだから。けれど未来のことなんて誰も知らないんだ。明日のためなんて言うけど、此の夜だって一瞬先の儚い未来だ。すぐに消え去ってしまう尊い時間だ。壊される筋合いなんてない。ない筈だ。だのに。
だけど、何も見ないでいるなんてことはできない。
だから苦しいのかもしれない。
生きようとすることは苦しいのかもしれない。
また、途中。
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