夜明けに気づかないふりをする話
タイトル通りならよかったのだけれど。
もう知ってる。
夜はいつか明けてしまうってことぐらい、嫌でも。
いつ夜の終わりを感じるようになったのか分からない。
朝まで起きていたって眠るまでは夜だった。いつも見ることのない空を見て、一人静にぼうっと感情と情景を享受して布団についたあの日は朝になっても夜の荘厳さを思った。きっとどうやったって見えない景色が夜だった。私にないもの、何もかもから離れた場所にあるもの、静けさと安息とざわめきと興奮と寂しさの象徴。私にとってすべては夜だった。