電柱一本が夜の夢って話。

忘れないうちに書いておこうと思っただけ。
確認しないものはいつの間にか変わっていってしまうから。

少しづつ書き足せばいいと思ったから、そうしようかな。
とりあえず今は下書きにあったままを流す。


夜に憧れていた。
漠然としたイメージだったけど、あんなに淋しくて気高くて優しくて不器用なもの他には絶対にないと思った。


初めはきっと夜が何かなんて考えもしなくて、ただそこにいた。
その後にはカッコイイと思った。きっかけは好きな小説だったかもしれない。漫画やドラマだったかもしれない。探偵や怪盗が暗躍するのは夜だったし、残業していた同僚とコーヒーを分け合うのも夜だった。

そうしていると、いつか夜はいいものだなという認識が出来上がっていった。朝とちがって急かされることもない。


それが強固になったのは、気が沈むことが多くなった頃だったと思う。夜更かしばかりしていた。どこまで行っても苦しい考えしか浮かばず、けれどそれを幼稚だと笑われることが怖くて一人になることを考えていた。

けれど、夜は、私を笑わなかった。

何も言わなかった。突き放しもしなかったし、優しくもしなかった。夜、寝静まったころに窓を開けて見入る景色は、どこか物足りなくて淋しくて、けれども引き寄せられる何かがあって。ここから飛んで行けたなら、今すぐに走ってあの先まで行けたなら!いつもの小路が、青白い電燈に照らされて、そこだけは別世界のようでした。ほんとうに、夢みたいに。

其れからはもう夜の中にずうっといる気がしている。少しあの頃よりは遠ざかってしまったけれど、それでもきっと夜だけは明けないでいてくれる。照らさないでいてくれる。


当時、好きだったものにはやっぱり夜にかかわっているものが多かったように思う。おそらく私の夜を形作っているイメージの元であろう作品がいくつかあるから書き記す。


・漫画「文豪ストレイドッグス」
  世界観の影響は大きいように思う。自身に大きな影響を与えてくれた。
・漫画「Black Cat」
  カッコイイの一言に尽きる。
・小説「闇の絵巻」
  手探り状態で夜の闇を歩く描写を読んだ時のあの感覚が忘れられない。
・小説「人間失格」
  初めて喀血する場面の色の対比が美しくて何度もそこを読んでいる。

詩も読んだ。中原中也さんや丸山薫さんの詩が好きだった。



あの頃の夜はきっと特別だった。

冬の空気はなんであんなにいじらしいんだろう。今思えば、あんなに焦がれたものはないんだ。焦らされたものはないんだ。刺すように冷たいのに唯一此処から自分を連れ去ってくれそうな誘うような包むようなあの風。なにもしないのに何もかも丸ごと冬に変えてしまうような心まで丸ごと奪っていくようなあの温度。網戸越しにしか触れられない世界でただひとつ浮かせるように飲み込むように。あんなにすごかったんだ。ぞっとする。連れていかれなかった、それだけが、少し寂しい。

厭だなあと思うんだ。

夜の声を知っている?――わたしは知らないから教えてほしいんだ。

電燈が青いのを知っているのは世界で私一人な気がしている。
貴方は知ってる?
あんな夜を貴方は知っている?

消えたいと思う頃に抱えた荷物が多すぎて
自分を持て余してここにいるのかもしれないなあ


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