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映画「あん」の舞台、多磨全生園を訪れた

http://leprosy.jp/japan/guidetour/

友人の誘いがきっかけとなって、「多磨全生園」にやっと訪問する機会を得た。東村山市のNPOと、資料館のスタッフが園内を案内するガイドツアーと、午後は回復者の女性の話を聴くという、貴重な1日となった。

まず(いきなりバス停を間違えて遅刻。。)資料館のホールで、館長さんから国内のこれまでのハンセン病を取り巻く歴史のレクチャー。当時からごく最近まで続いていた差別政策や、それによって深く人々の心に根付いてしまった意識から、悪循環が続いていった話を聞く。

今では可治の病。しかし、病気が治っても、偏見によって社会復帰が難しい状況が続いていた。今、園内で暮らしを続ける方はかなり高齢で平均は86歳。政策によって子どもを持てず、体調を崩しても世話をする家族はいない。他の親戚などは、連絡が取れている人もいるが、当時家族に患者がいることに対する差別を恐れて、お互いに連絡を取り合わなくなってしまった方も多いと言う。

「病と人を分けず、同一視して、人そのものを撲滅させようとした」という言葉が心に残っている。「国の恥」と言われた時代を経て、1996年に法律が変わり、2001年にやっと国による全面保障が行われるようになった。長いながい歴史。

レクチャーの後、ボランティアガイド(友人が関わっている)さんの案内のもと、園内をグループで見学させていただいた。

「県木の森」ー様々な都道府県からのやってきた人たちは、出身地の県木を植えた。「雑木林」ー『患者作業」と言われる仕事によって、自分たちの食料は園内で自分たちで作っていたという。食用の梅などもたくさん植えられていた。綺麗な花がさいていた。「神社」ー社も、すべて手作り。季節になるとお祭りもしていたという。「小学校のグランド」ー子どもたちのために、小学校を建て(自分たちで)、勉強を患者である大人たちが教えた。

「ヒイラギの木垣」ー脱走できないように尖った葉のヒイラギで、高い垣根のような壁を作った。その真下には深い溝を作っていたことが最近発見された。これは外から見ても、はっきり隔てるもので、差別意識を根付かせる一つの要因なったとも言われている。「当時の共同生活の建物」ー狭い部屋にたくさんの人たちがプライベートはほぼなく暮らしていた様子がわかる。「教会、お寺」ーこれらも中の人たちによってつくられた。

『死んで煙になって初めて故郷に帰れる』亡くなるまで外に出ることは許されなかったので、最期をどこで送ってもらうのかを選ばされたとの事。

「望郷の丘」ー小高い丘を、農地開拓などで出た土砂や石で作り、外を空を眺めて故郷を想った場所。

そして「納骨堂」ー園内で亡くなった方は、火葬され、その後はかなり簡易的にお骨を置いていたが、のちになって、中の人たちでお金を少しづつ出し合って納骨堂を完成させた。お堂の扉には「倶会一生くえいっしょう(あの世に行ってもともにあろう)」という言葉が書かれていた。その横には堕胎した子どもを弔った碑もあり、思わず涙が止まらなかった。

最近までは、園内と周りの街は交流が少なかったが、回復者で今でも中で暮らす人たちが、「この歴史を後世にちゃんと伝え残していきたい」と、誰でも気軽に入れる場所をと、資料館を作ったとの事。その強い想いに心うたれた。

昼食は、園内の小さな食堂でいただいた。どこか見覚えがある、と思っていたら、映画「あん」の最後のほうで登場する食堂だった。思わずぜんざいを注文し、映画を思い返していた。

午後にお話を伺った回復者の山内キミエさんは、すごくチャーミングで、厳しい差別を生き抜いてきたからこそ、今は強くあっけらかんと「わたしは今は日々不自由だとは思っていない」ときっぱり仰った。チャレンジとして園外にアパートを借りて(かなり苦戦したそうだが)、当たり前にできたはずの普通の社会で暮らす、ということを楽しんで毎日を過ごしていると。園内にある幼稚園でボランティアも通っている。

子どもたちが、キミエさんの、後遺症が残る手先を見て「どうして?」と聞かれて「神経の病気になった跡が残っているのよ」と答えると「神経って何?」とさらに質問が来て、答えていっていると。子どもは素直に聞いてくれるから、そこに差別や壁はない。キミエさんは幼稚園では人気者で、誕生日にはたくさんの子どもたちがお祝いしてくれるという。

違うことが当たり前、という意識が子どもたちの時代には広がっているといいな。違いを恐れる、ではなく素直にオープンに受け入れあえる社会になっていくといいなと思います。

八重桜や菜の花もとっても綺麗な、暖かい春の素晴らしい1日でした。

映画「あん」原作者、ドリアン介川さんのインタビュー@ハフポス


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