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持って生まれた性質通りに生きる

2025年 2月3日。新しいランニングシューズでいつものコースを走ってみました。


ここ数年,家族が誕生日プレゼントにランニングシューズを送ってくれるようになり,いつの日からか,毎年2月3日が「ランニングシューズを新しくする日」になりました。アシックスさんのランニングシューズを愛用してかれこれ15年くらい。毎年生み出される新しいモデルのシューズは,軽量化が進み,ソールの反発性とクッション性も改善され,年々走りやすくなっている感覚があります。そんなわけで,2月3日は,長距離を走る上でのシューズの重要性を再確認し,ランナーとしての気持ちをリセットする日でもあります。と,なんだか偉そうなこと語っていますが,大した記録があるわけでもなく,ただ好きで走っているだけの普通の市民ランナーなのですが,汗。


昔から走ることが好きで,本格的にランニングを始めたのが2010年。2010年がスタートした元旦の日,年齢とともにいろいろなことが「できなくなる」のではなく,いろいろなことが「できるようになる」歳の重ね方をしたいという気持ちがふと芽生えたことがきっかけでした。どこからともなく自然発生的に湧き出てきたその気持ちが,その日の新聞の朝刊にあった「1年でフルマラソンに挑戦!」という記事を目にしたことで,さらに具体性を帯びることに。その日の午後には,ランニングシューズを買いに出かけていました(単純!)。2010年当時は,神奈川県内の大学に勤めていましたので,初めてランニングシューズを買ったのは,確か,本厚木のミロード店内にあるスポーツ専門店だったような。対応してくださったスタッフの方がとてもプロフェッショナルな方で,「ランニングシューズは普段より少し大きめサイズでないといけませんよ」とか,「あなたの足底は扁平足気味なので,底をぐいっと持ち上げるタイプの靴下を履かないといけません」とか,ランニングの基本やランナーとしての心構えなど,大切なことをたくさん教えていただきました。このプロフェッショナルなスタッフさんが,「あなたの足にはこれがいいと思う」と言ってすすめてくださったのが,アシックスさんのランニングシューズでした。


あの決断の日から15年。年齢は重ねましたが,走る足は15年前よりも筋肉でぎゅっと引き締まっているように感じるし,走る精神は15年前よりもうんと強くなっているように感じます。毎日小さな努力を続けることが大きな力になっていく,大きなことを成し遂げるには小さなことを積み重ねていくしかないということも,走ることを通して得た気づきです。


ランナー歴が15年で,できるだけ毎日練習するようにしているという話をした時に,よく人から言われることがあります。「えー,ストイックですね!」とか「わー,意思が強いですね!」というものです。ランナーとはストイックな人,ランナーとは意思の強い人という,無意識の固定観念があるのかもしれませんね。


しかし,直接相手に伝えたことはありませんが,「ランナーであり続けること」は,「ストイックであるかどうか」,「意思が強いかどうか」といった問題とは,あまり関係がないように思います。なぜなら,ランナーの多くは,おそらく,「ただ走ることが好きだから」という理由で走り続けていると思うからです。あるいは,「ただ走ることが自分に向いているから」という理由かもしれません。


小説家でありランナーでもある村上春樹さんが,著書 "What I Talk About When I Talk About Running" の中で,次のようなことを書いておられます。


I don't even think there's that much correlation between my running every day and whether or not I have a strong will. I think I've been able to run for more than twenty years for a simple reason: It suits me. Human beings naturally continue doing things they like, and they don't continue what they don't like. (…) People basically become runners because they're meant to (pp. 44–45).
私が毎日走っていることと,私が強い意思を持っているかどうかに,それほど相関関係があるとは思わない。私が20年以上も走り続けてこられたのは,単純な理由だ。それは,走ることが自分に向いていたということだ。人は,好きなことは自然と続けるし,嫌いなことは続かないものだ。(...)基本的に,ランナーになる人は,ランナーになるべくしてなるものなのだ。


人間の性質は,環境によって変わる部分もあると思いますが,「一生変わらない持って生まれた性質」というのも,あるような気がします。社会人になると,環境や周囲の人々の期待に応えようとする中で,その期待に沿う行動や振る舞いを取るようになりますが,根底にある性質は,幼い頃からほとんど変わらないのではないかと。だから,自分の性質を無理に変えようとするよりも,自分が生まれ持った性質を生かせるものやこと,それを受け入れてくれる人や場所が見つかると,人生が随分と生きやすいものになるのではないかなと思うのです。持って生まれた性質に自分を合わせる,自分の生まれ持った性質通りに生きる,得意分野で生きていく。同調や調和が重視されがちな社会で暮らす中で,こんなマインドセットがあっても良いと思うのですね。



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