あやふやな国のあやふやな味のアイス 4話 太陽の国のシャーベット
21歳の私は友達8人と共にヨーロッパをバックパックで旅していた。
スペイン・コルドバは中世までイスラム教で、その後ユダヤ教やキリスト教が入ってきた街なので、建物の様式が独特だという。歴史地区に鎮座する世界文化遺産のメスキータ。いかにもイスラムな縞模様のアーチを見て、食いしん坊な私と友達は口々に「ペロペロキャンディーみたいじゃね?」と囁きあったものだ。
白い壁に囲まれた家々を横目に狭い路地をすり抜けて広場に出ると、光の灯されたトゥルトゥルのお肌の古いマリア像があったりして、おもしろい。
メスキータの近くの少し素敵なプチホテルがその日の宿だった。コルドバらしく、中庭があった。白い壁をバックにパッションピンクのブーゲンビリアが花咲く、うつくしいそのパティオ(中庭)を臨む窓。そこに、洗ったパンツとブラジャーを干していたら、館内放送で『2階の日本人〰️パンツ干すのはアカン!!』と、ダメ出しされた。ヨーロッパ文化に溶け込めない恥ずかしい日本人観光客とは私たちのことである。
※追記。放送じゃなくてフロントからの電話だったかも笑
フロントで「パンツ干してごめんね」と謝ったその口で、中庭に出て、アイスを買い食いしてみた。
いつもなら乳っぽいアイスを選ぶが、その時は「せっかくスペインに来たし」とオレンジのソルベ(スペイン語だとソルベテか)を選んだ。
暑い日、真っ白い中庭で、透明感のあるオレンジ色のシャーベット。はじめて友達と来た海外で、自由にむせかえりそうだった。
夢みたいな情景だったなと、ふと思い出す。