『ペリリュー外伝』3巻
本編でもめちゃくちゃキャラが立ってて魅力的だった小杉伍長の話はずっと読みたかった。
妻の志津のその後とペリリュー島での小杉のある日の話。
志津の話では回想で小杉が喋るシーンはほとんど無いのだけれど、最後の方の見開き絵でポンと台詞がひとつだけ置かれる。
それだけで「ああ、魅力的な人だったんだな」という想いと、同時に志津のもう決して戻ってくることはない「一生に一度の瞬間」だったんだなと染み入る。
凄くいい見開き。
戦争漫画に対して感想を言うのは難しい。
「戦争は良くないと思います」なんて結論わかってる。
でも、わかってるだけでしかない「戦争は良くないと思います」を更に染み入らせるのはやっぱり「当時を生き抜いた人々の顔」なんだと感じる。
『ペリリュー』は全編通してそこを描いてると改めて思う。
一応はフィクションではあるけれど、徹底した取材の中で生み出された「あの時あそこにいた人達」のリアルな姿を描き出して、確かにそこに生きた人間がいたんだと、染み入らせてくれる。
本編での田丸見るペリリュー島の「美しい光景」も、そこにいた人の目を通してまるで自分達が体験するかのような光景だった。
そういう意味で、主人公以外のキャラや、「戦争が終わった後の日々」を掘り下げるこの外伝は、「確かにそこにいた人達」の実在を分厚くして、言葉でしか「戦争は良くないです」を理解できない自分達に染み入らせてくれる。
ただの本編キャラを使ったスピンオフじゃなく、ちゃんと意義のある外伝になっていて素晴らしいと思います。
しかし島田少尉は悲しいなぁ。
今回のエピソードが加わると本編の結末がまるで呪いのように感じられて、改めてゾクリとする。生き残り組の戦後話ももっと読みたい。