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『薔薇が咲くとき』
フランスの作家の長編を高浜寛が漫画化。
生前一度も父に会うことの無かったフランス人の女性が、父の訃報を受けて日本の京都にやってきてーーという話。
京都の寺やお店、その思想や考え方を巡りながら、この世界という「地獄の上」をどう生きていくべきなのか、ゆっくりと探していくような長編漫画。
フルカラーで描かれる京都の情景は美しくて、でも同時にこの世界の無常な空気も漂っているというか、ただの「京都観光漫画」とは違った空気感で。
もう「高浜寛以外に誰が漫画に出来ようか」ってくらい合っている人選でした。
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自分は正直そんなに京都とか日本分化に詳しくないし、実際に見たこともない(修学旅行で行ったかどうかも覚えていない)。
いい年して幼稚な感受性しか持ち合わせちゃいないガキですが、でも人生でひどく傷ついたり、何か大切なものを亡くしたり、絶望に沈んだ時、もう一度ゆっくりとこの漫画を読み直すかもしれないと思いました。
最近色々あって、それは遠くない未来かもしれないとも。
その前にこの漫画に出会えていて良かったと思う時が来るかもしれない。
京都かぁ。行ってみたいな。
ゆっくりと歩いてみたい。
それで「今の自分が想うこと」を記録のようにメモしておきたい。
そんな風に感じました。
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それと封入されている京都の情景が描かれているポストカード集もとても素敵でした。
高浜寛は『蝶のみちゆき』とかの長崎シリーズもそうだけど、ひとつの街を空気や匂いごと「漫画の中に再現させる」ことが出来る稀有な漫画家さんなんだなと改めて感じましたですよ。
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この雨の京都の絵面とっても好き。