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『夢なし先生の進路指導』4巻

やっぱりメチャクチャ面白いです。

何がスゴいって「このまま普通に将棋漫画を描けるんじゃないか?」って感じる程の、この作者の「勉強力」です。

どっからどう見ても、この「棋士編」を描くためだけにメチャクチャ勉強して、取材して、事前の準備を完璧にして描き始めてるんだろうなというのが伝わってくる。
改めてこの作者さんの立場になって考えてみるとわかるんですけど「若者の夢を否定する」というこの漫画のテーマ的に、そのジャンルに関してリアリティの無い展開や物語は絶対に描けないんですよね。
「夢が叶う話」ならなんとなくふわっとしたイメージだけで描いちゃっても、ポジティブな展開や物語ならある程度許されちゃうラインはあると思うんですけど、この人は真逆のことをしようとしているわけで。
そこを成立させるために出来ることは「勉強しまくる」ことだけなんだろうなと。
それなら出来る。
むしろこのテーマを描く方法はそれしか無い。
だから真摯に向き合って「勉強しまくった」のがもう漫画から立ち登ってくるようで、その作者さんの姿勢が完全に漫画内の「夢なし先生」の姿とリンクするんですよね。

だからもはや自分の中では「夢なし先生」とこの作者さんはほとんど同一人物だと思ってこの漫画を読んでます。

「夢なし先生」が語る内容の説得力は、内容の確かさもそうですが、それ以上にこの作者さんの「リアルな世界での努力の量」が担保しているように感じます。
だって誰がどう見たってすげー勉強してるのはわかるもの。
で、ここまで真摯であるなら、結局人は耳を傾けちゃうんだな、と。
それはもう現実と漫画の中身がグッチャになっちゃってますけど、でもそれによって発生している有無を言わさない説得力がこの漫画を特別なものにしていると感じます。

いやぁ面白いわ。すげーわ。

「棋士編」の「天才vs夢なし」の構図は、まだ結末に辿り着いていないからどういう着地になるかわからないですが、「才能のあるなし」と「夢の成就」はあんまり関係ないってのは普通によくある話であるとは思っていて、だからこそそういう「よくある一般論」とは違う、真摯に現実を見据えた結論が見たいとは感じています。
「誰も言わなかったけどそりゃそうだよね」という、シンプル故に物語では語られることが少ない結論。
当たり前のように見えて「ハッ」と目を覚まさせてくれる夢破れた者への言葉。
それをこの漫画の「説得力」なら見せてくれると思うし、今までも見せてくれたから楽しみです。

でも次巻は回想編に終始するのかなぁ。
そっちはそっちで楽しみですが。

にしてもなんで帯文がたけしなのか。
ふつーにすげーな。
どういう経緯で誰が紹介して読んだんだろうか。
『住みにごり』の帯も書いてたし、たけしと漫画の趣味合うっぽいぞ。

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