『ザ•キンクス』2巻
榎本俊二が天才なことなんて知ってる人からしたら当たり前のことじゃないですか。
『ゴールデンラッキー』は今読んだって他に誰がこんなものを描けるんだという唯一無二の個性に溢れているわけで。
誰にも出来ない発想と誰にも出来ない表現法方で誰にも創れない作品を若い頃にもう創ってしまってる人じゃないですか(勿論その後の作品も全部凄いんですけど。『えの素』も『ムーたち』も、そして個人的に大好きな超傑作『斬り介とジョニー四百九十九人斬り』も)。
天才が天才を発揮した後に、どういう風に生きていくのか。
死んじゃう人もいるでしょう。
全く創作しなくなる人もいるでしょう。
あまりにも誰にも創れないものを創って、天才のその後を見せてくれなかった人も何人もいたように思います。
でも榎本俊二は、なんていうか、「普通に生きて普通に創作を続けてる」んですよね。
そこが1番すげえと思えてくる。
『ザ•キンクス』は絶対に若い頃には創れなかった作品だけど、でもメチャクチャ榎本俊二でしか創れない作品でもあって。
なんていうか、この世にたったひとつしかない、唯一無二の「天才の年相応」を読ませてくれているように感じます。
天才と同じ時代をリアリタイムで生きて、その人の創るものが変化していくのを見届ける楽しさを存分に見せてくれているみたいで。
なんつーか、ちょっと大袈裟かもだけど、こういうの読んだり見たりしてる時に、「あー、俺、今、生きてて良かったなぁ」と思っちゃうよねえ。
でも同時にチンコウンコ漫画も描いてるのが本当に榎本俊二過ぎてステキ。
ラジオの回と映画の回がたまらなく好き。
人生で「おもしろいもの」に出会った瞬間のパッと開ける感じを見事に表現してて、あと押し付けがましくないバランスなのがとってもいい。
「映画!」「青春!」「俺達!」「あの頃!」「超素敵!」みたいなサブカルを愛しすぎてる人達のグイグイ感が無いちゅうか、ちゃんとあの頃の年代のキャラの目線で「思いがけず何かに出会う」雰囲気で描いてるのがとっても誠実だなぁと思う。
そういう意味で姉と弟の世代の違いも絶妙でいい。弟目線のマークの回も凄い好き(初期『ぼのぼの』とか思い出す)
ほんといい漫画だなぁ。大好き。
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