麻雀放浪記~これいいから読んでみて

「もはやお忘れであろう。或いは、ごくあたりきりの常識としてしかご存じない方も多かろう。が、試しに東京の舗装道路をどこといわず掘ってみれば、確実に、ドス黒い焼土がすぐさま現れてくる筈である」

国語の副読本がすきでした。教科書に比べて、副読本は読む内容が多くて濃くて、とてもすきだったので今でもそばに置いています。

その中に近代文学の文体を紹介する項目があって、夏目漱石先生の「坊っちゃん」や川端康成先生の「雪国」、太宰治先生の「駈込み訴へ」、どれも書き出しだけで先が読みたい!と思わせる文章でした。

けれど、「書き出しを読んだだけで最後まで読みたくなる小説は?」といま訊かれたら、阿佐田哲也先生の「麻雀放浪記」です。最初に上げたこの冒頭!読んだだけで焦げ臭い土の匂いがしてくるような、これから何が起きるのか、心を鷲づかみされる文章。

麻雀が題材というだけで、いまでもやっぱり大衆小説扱いですが、わたしは戦後すぐの短い時代、善悪の彼岸を渡り歩いた人々を爽快にえがいた小説だと思います。これから読むひと達がうらやましいです。

漫画化も何回かされていますが、わたしは井上雄彦先生で、バガボンド10巻くらい頃の、あの泥臭さと爽やかさが入り混じった絵で読んでみたかったなあ。。。といまでも思います。

角川で映画化もされて、それもよかったです。真田広之さん、鹿賀丈史さん、高品格さん。皆さんギラギラしていて小説の空気感を出していました。けど「ドサ健」はわたしのイメージでは岸田森さんでしたね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?