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普通(普通とは言ってない)

「フリーの女性アナウンサー(29)が男性の体臭についてSNSに投稿し、所属事務所から契約解消された問題」といえば通るらしい件。
 この書きぶりを交えたとある記事で、とある漫画家が自身のSNSで言及していることを取り上げていた。
 それによるとこの漫画家は、「普通の会社なら、これで社員を首にすることは不可能だと思うが」と言っているらしい。


 有名税という概念が妥当か不当かはさておき、最近の有名人ないしそれを目指す人はとっても図々しいと思う。この漫画家のこの感慨も、それを良しとするようなものだ。
「普通の会社なら」と言うが、まずもって「フリーの女性アナウンサー」が普通と言えるのだろうか?
 女性アナウンサーといえば花形の職業という印象が僕には根強い。今もそうなのかはテレビ離れ久しいために正直わからない。しかし「普通の会社」に入ることより、女性アナウンサーになるほうがよほど難しいことは僕でもわかる。一般人はもとより下手な芸能人よりも、よほど普通からはかけ離れているものだろう。


 斯様に普通ではない立場にあり、普通ではない形而上下の対価を得ているあるいはそれを得ようとしておきながら、毀誉褒貶のうち毀と貶に関しては普通圏内であるべきことを主張する人がいる。
 本件においてこの漫画家は僕と同様に第三者でしかないが、同様の感覚でいる第一者もいるのだろう。フリーの女性アナウンサー(29)がどうかは知らないが、そう言って憚らない人もこれまでにいたような気がする。これからもいるだろう。


 ノーリスクハイリターンを望みたい気持ちは僕もわかるし、それを求めることも普通かもしれないが、そんな都合のいい話はないからある程度リスクを負うこともまた、普通だと思っている。リスクを負うのが嫌ならば、ハイリターンを諦めるべきだ。
 しかし昨今はどうも事情が違うのかもしれない。図々しいのが普通であり、そうでないのは普通じゃないということなのかもしれない。あるいは「普通じゃない特別な人の言動は、普通の人間は許容してしかるべきだ」ということなのかもしれない。
 どうにもこの傾向を理解できそうにない僕は、やっぱり普通じゃないらしい。

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