マシュマロのお返事 No.5
あれからまもなく二ヶ月が経とうとしていますが、残念ながら目に飛び込んでくる映像、耳に入ってくるニュースの残酷さは増すばかりで、暗澹たる気持ちになります。
所詮当事者でない私たちでもこれほど落ち込む事態ですから、彼の地の人、そしてそこから離れなければならなかった人たちの絶望を思うと、想像してもしきれません。
そんな中で今回送ってくださったマロもまた、大変考えさせられる内容でした。
全ての部分にお返事するには私自身の能力と容量的に難しいと思い、少しかいつまんでの内容になることをどうかお許しください。
どう転んだって、失うものあるいは今後も継続して失われるものの方がずっと大きく、だからこそここまでのことをしでかすなんて、その道の人も含めた世界中の多くの人にとって想像できなかったのだと思います。決まり事も、信頼も、全てかなぐり捨ててまで…
こんなことになって、相対的にロシア人が命の危険もなく普通に暮らしていることに憤りを感じたり、マロ主様と同じくやるせない気持ちになっている方というのは、少なくないように感じます。
私自身もそんなロシアにいるわけですから、どうして私はこんな平凡に暮らしているのだろうか、生きていたって何の役にも立たないのにな…と思うこともあります。
最初の頃に比べて国内の雰囲気も随分と変わり、支持率のそれではありませんが、今こうしてるうちに人々の心のうちも変わっていくので、もう正直考えること自体をやめたくなります。まぁでもこれらは、大人による大人の、どうしようもなく情けないお話です。
マロ主様は現在妊娠中とのことで、母親、そして子どもたちが巻き込まれていく姿にとても心を傷めていらっしゃることが、伝わってきます。そして、これから生まれてくるお子さんの未来について案じておられることも…
日本も隣国ですし、こんな容赦のない有様を知れば、心配しない方が土台無理な話ですよね。私もマロ主様もそして子どもたちも、まだこれからを生きていかねばなりませんから、このような悲劇が繰り返されぬよう、できることを考えていかねばなりません。
そのひとつに、 新たな憎しみの種を育てないこと が含まれていると私は思っています。
この一連のあれこれがいずれ落ち着いたとして、その後ロシア人たちは、恐ろしいほど熱烈に政府を支持する人も、心酔している人も、信じて疑わないだけの人も、現実が見えていない無関心の人も、あまり考えたくなくて見て見ないふりをしている人も、命懸けで戦わされている人々も、全てを投げうって逮捕される覚悟で反戦活動をしたり平和を訴えている人も一様に、国と共に厳しいレッテルと十字架を背負うことになります。
大人はこの際、どんな立場の人であれ一括りに仕方ないということにひとまずおきましょう。
でも、ロシアにも生まれたばかりの命、そしてこれから生まれてくる命があります。
彼らは、それこそ何の罪もないのに、生まれるやいなやそれらをいきなり背負うことになります。
命の危険は、ないのかもしれませんが…子どもたちが持たされるにはあまりにも重すぎる荷物です。
余裕のある人々や外国にツテのある人の多くは既に出ているわけですから、これから国内で生まれ育つ子どもたちが大人になったとき、自分の意思で外に出られるほど豊かに育つかどうかも、疑問です。
今既に、よくあるお国独自の教育が始まろうとしています。確実に種は撒かれようとしています。
某北の国ではありませんが、そのような教育を受ける中で仮に"全面支持"するような子が育ったとして、恐ろしいのはその子自身なのか、教育か…はたまた…
最初らへんに書いたように、日本の子どもたちを守るためにも、私はこの憎しみの種をなるべく大きく育たないようにしたいです。
愛を知らない子に愛することが難しいように、憎しみからは憎しみしか生まれないと思っています。
何も知らないこれから大人になるロシア人の子どもたちに植えられようとしている種に、憎悪という栄養を与えたくありまあせん。
その種が十分に根付き、育って得をするのは、誰でしょうか?私たちが今最も辟易させられているあるところの政府ではないでしょうか。
外に何かしらの敵がいると吹聴され続け、国内の歪さから目を逸らせ、実際に外の世界からも憎まれていると知ったら、嫌われていると知ったら…そんなふうに育ったら、子どもはどうなってしまうでしょうか。どんな大人になってしまうでしょうか。
それはそれで、とてつもなく不幸なことだと私は感じます。
もちろん、そんな中にあっても途中で気づく人も中にはいるかもしれませんが、そう多くはないことは現在の大人の世界を見ていても明らかだと思います。
あとになればなるほど、自分を変えることは難しくなりますから…
もちろん今まさに蹂躙されているウクライナの人たちに憎むな、恨むなというのは無理があります、そんなのはただの心ない綺麗事です。
でも、当事者でない私たちのできることは、同じ目線に立って同じ仇を憎んでだり恨んだりすることではないと思っています。
今被害を受けている人たちを思いやったり、気持ちの上で寄り添うことと、必要に応じてともに抵抗することと、それらは別です。
現状木を見ることしかできない状況にあるウクライナ(また、同じく残虐な目にあい理不尽な環境に置かれている複数の国や地域)の代わりに、木を支えながらも周りの国は森のお世話もしなければなりません。森を作るにはそれなりに長い時間がかかります。しんどくても、同時並行で進めていかねばなりません。
時々ウクライナの人々に感情移入しすぎてか何なのか、その人が大嫌いであろう国の行動と同じくらい理不尽で攻撃的な言葉を送って来られる方がいらっしゃいます。
どうかマロ主様は、見失わないでください。憎しみに心を巣くわせないでいてください。
今のその優しさを持って、お子さんを愛し、未来を憂いてください。
ただ少しだけ意識して、憎しみや憤りに通じる気持ちを、どこかに流してもらえたら…それがマシュマロでも構いませんし、ご自分のTLでも何でもいいです。
(もちろん無理にとはいいません、胎教に悪いですから、何だこいつうるせえなと思ったらすぐこんなページは閉じてください。。)
ウクライナの人々を思いやるあまり、何故ロシアでは…そうした思いが込み上げてくるのは仕方がないことです。
ただ、そうしたやるせない気持ちから、今後誰かの平穏無事な生活を拒否したり、不幸を願ってしまうような気持ちに進展しないことを、願ってやみません。
別の誰かが不幸になっても、ウクライナの人たちは報われません。誰かの幸せが誰かの不幸と引き換えにならないにこしたことはないです。
ここに至るまでに絡みに絡んだ世界中の負の連鎖を、人間という生き物が少しでも早く断ち切れる日がくるように祈りたいです。
余談ですが、私のロシア人の数少ない友人が昨年秋に出産をしました。彼女とその赤ちゃんの交流の中で、ウクライナの人々の理不尽さに憤りをおぼえながらも、この人たちにも幸せになってほしいと、心の底から思ってしまいました。
私にはロシアに身近な人もいますから、もしかしたらこれもひとつのバイアスかもしれません。話半分くらいに、こんな意見もあるのね、と、別の視点の何かだと思って読み流していただけたらと思います。
時間をかけたわりにキチンとまとまったお返事ができず、申し訳ありません。
彼の地がなるべく早く落ち着き、そして主様と赤ちゃんの妊娠生活と出産が無事でありますように。
※これまでにも書いてきていますが、今回の一連の行動に非があるのは大前提とした上のお話です。犯罪者が悪いのは当然としてその予防策や対策を考えないわけにいかないのと同じことです。(今日のこの文章はそれとは少し離れているものの、地続きのお話だと思ってこの注意書きをそのまま掲載しました。)