
骨まで愛したい
最近メタルコアというジャンルの音楽をよく聴いている。
聴き始めたのは最近だが、サブスクのおかげで、すでに聴いたことのあるバンドが数十組はいて、日々増え続けている。
とても覚えきれないので、テキストデータにアルファベット順に並べて管理している。出身国とか特徴を書いて。
でも各バンドの代表的なアルバムどころか、代表曲すら把握できていない。同じアルバムを2回聴くことすらまれだ。もちろんメンバーの顔や名前などひとりも知らない。
選択肢が多すぎて、どれか一つのバンドを集中して聴くということができない。というか、どれか一つのバンドを気に入る、ということがないのだ。
これって何かに似ている。
と思ったら、あれだ、ガゼルが集団で逃げていたら、ライオンはどれか一頭に集中できないから、逃げるときは群の中にいるほうが安全ってやつだ。
つまりメタルコアバンドたちにしたら、他の有象無象のバンドと同じような曲を作っていれは、私に狙い撃ちされることはないってことだ。
下手に目立つ曲を作ってしまったりしたら、すぐに私に目をつけられて、追いつかれて喉笛に食らいつかれ、引きずり倒され、骨の髄までしゃぶり尽くされてしまうのだ。
私に骨の髄までしゃぶり尽くされたバンドたちの怨嗟の声が、いまもこの耳にこだまする。
ビートルズ、ツェッペリン、クイーン、メイデン、ホワイトスネイク、メタリカ、ガンズ……
無限にも思えるほど選択肢のある昨今、何かを飽きるほどしゃぶりつくすことのできる日はふたたびやってくるのだろうか……