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グリアプ、グヌー、オフだん、ヌルバラ、夜鳴く鹿
テレビを見ていたら、Mr. GREEN APPLE が出ていた。ふと思い立って、一か八かで言ってみた。
「グリアプって人気なんだね」
家人は「うん」と言うだけで、特に反応はなかった。
私の予想は当たったらしい。
念のため調べてみたら、しかし、まず Mr. じゃなくて Mrs. だった。うっかり正式名称を口にしなくてよかった。
おじさんだらけで「クイーン」と名乗るバンドだってあるのだから、そこはまあよしとしよう。
なんと略称は「ミセス」なのだそうだ。
なんだか腑に落ちない。なぜ「グリアプ」や「ミセグリ」ではダメなのか。
昔、洋楽を知らない友だちが、エアロスミスのことを「エアスミ」と言ったのを、「エアロだよ」と小バカにしたものだが、私の「グリアプ」も若者に笑われるに違いない。
家人は単に私の話を聞いてなかっただけなのかもしれない。
略称とは集合無意識の産物だ。
おそらくアーティスト側が「ミセスって呼んでくれ」と言ったわけではないし、所属事務所が仕掛けたわけでもないだろう。自然選択と同じように、同時多発的にさまざまな略称が生まれ、その多くが淘汰され、いちばんダサくないと過半数の人に認められたものだけが生き残る。その紆余曲折をまったくしらない門外漢がこれを予想するのは非常に難しい。
今回はその困難に立ち向かう挑戦の記録をしたためてみた。
・水曜日のカンパネラ→水カン ◯
ちょっと聞きかじっていたアーティスト。バンドなのか個人なのかもよく知らない。まず「カンパネラ」があやしかった。「カムパネルラ」ではないと思うが、「カンパネルラ」のような気もする。調べてみると、正式名称も略称も正解だった。幸先がいい。
・King Gnu→ヌー ◯
これも当たりだった。「キンヌー」は言いにくいし、アイアン・メイデン→メイデン、モトリー・クルー→モトリーみたいに、うまく略せないものは一つの単語で代表させる法則があるから、「キング」よりは特徴のある「ヌー」の方だろうと踏んだのだ。個人的には「グヌー」もいいと思う。gnu のサイレントレター g を読むのではなく、「キン」と「グヌー」に分けてからの「グヌー」である(どうでもいい)。
・Official髭男dism→髭男 △
これはうっすら知っていた(正しくはカタカナ表記のようだが)。そもそも正式名称をちゃんと知らなかった。だがなぜこう略されたのか考えると興味深い。「オフひげ」は言いにくいから「オフだん」「ひげイズム」ならわかるが、真ん中だけを取るとは。エビシュウマイのエビだけつまんで食べてるみたいで落ち着かない。
・Nulbarich→ヌルバラ ✕ ナルバリ?
ヌルバライヒかと思ったらナルバリッチだった。正式な愛称があるのかは分からなかった。ウィキペディアによると「『Nul(ゼロ、形なく限りなく無の状態)』『but(しかし)』『Rich(祝福、満たされている)』という相反する単語を繋げた造語」だそうだ。かっこよすぎて鼻血が出そうだ。中世ドイツの選帝侯の名前とかかと思った。惨敗である(勝負なのか?)。
・ヨルシカ→夜鳴く鹿 ✕ 夜しかもう眠れずに ◯
これは「ヨルシカ」が何かの略だと思い、その由来を予想してみた。例えば「夜しかない世界」みたいなフレーズが元になったとすると、「ヨルセカ」になるはずだから、ヨルシカの「シカ」は副助詞の「しか」ではなく動物の「鹿」のほうに賭けたのだが、もろくも敗れ去った(ギャンブルなのか?)。「夜しかもう眠れずに」という歌詞が元になっているそうだが、だったら「ヨルネム」でいいのに。しかしこれでは「夜眠いのは当たり前じゃないか」とツッコまれそうだから、ヨルシカにスルシカなかったのであろう。お後がよろしいようで…