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「小さな彼女」

惰性と勢いで書いた随筆的な文章なのですが、一応自分の作品なので掲載させていただきます。何かご指摘や感想あれば遠慮なく教えてください。

改行はわざとしていません。


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「小さな彼女」

この小さな部屋の中で、身体は大人の女で心は少女である女は、一生くすぶり続けている。
恐ろしいかなこの小さな部屋の中だけで彼女の社会は完結してしまう。彼女は社会と繋がっていながら、社会と断絶された存在なのだ。
小さな小型の機械を開いて閉じるだけが彼女が社会へと繋がる唯一の手段であり、わずかな自己同一性の創造に貢献する。
小さな世界だけで生きる彼女が死んだところで、当面の間は誰も気が付かないであろう。
彼女は野望だけは大きく、日々野心のすすめを貪り、己の中の漠然とした気持ちの中に革命を起こしたい気持ちを高まらせている。
その無計画な野望と心得だけがご立派な革命家的精神が、彼女を苦しめている諸悪の根源であると彼女自身も自負している。
ただ彼女は努力をする方法を知らない上に、血と汗を流すことで己が傷つくことを過度に恐れる、哀れでこの上なく可哀想な人間だ。彼女は本当は周りの人間が自分のことを変人だと面白がり、嘲笑っていることを知っている。自分の周りの人間が、珍しいものを見るような目で自分の行動を称賛し特別扱いをしつつも彼ら彼女達が心のどこかで自分を異世界のねじの外れかけた変人としてみなしていることを彼女は感じ取っている。
小さな部屋の中にいるだけで、形だけは社会とつながっていることに対して、楽をしていると思われているのではないかと怯えている。彼女は自分が一生小さいままで何も成し遂げることなく世界から忘れ去られることに対して恐怖を覚えている。
彼女は自分を少しでも大きく見せようとするあまり、現在進行系で間違った方向に走り出している。
理想の自分を設定することで虚像の自分を作り出し、誰かからの憧憬の眼差しを求めている。ただ本当はいつも誰かを羨み、努力のできない自分の弱さを嘆き、残酷な悲劇のヒロインとして自分の神聖なる部分を崇めている。
哀れな彼女は、女は誰かに寄生するべきではないという矜持を持っている。
ただ、それは矜持に過ぎず、実際は愛されることを過剰に求め、ぞんざいに扱われることを恐れている。
彼女はこの世界と共生することに限界を感じ始めている。彼女はこの世界から逃げる必要があり、少なくとも小さい世界から逃げないといけないと焦っている。彼女は今まで、他者から愛されることによって自分は苦しみから救出されるものだと思っていたが、実際は、自力でこの狭い世界から逃げなければならないのだ。


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