2030年の世界地図帳_#3

地球と人間の関係性

・環境

「人間が1週間に体内に取り込むマイクロプラスチックはクレジットカード1枚分にも及ぶ」という研究結果が話題になったように、日々の生活と環境の問題はリンクしている。

・バーチャルウォーター
とうもろこし1キロ生産するのには、1800リットルの水が必要
とうもろこしを肥料にして育つ牛は、1キロ当たる4000万キロの水が必要と言われている。
*日本の家庭で一日で使われる水は280リットルほど

・オゾン層の破壊の研究でノーベル科学賞を受賞した、オランダの大気化学者のパウル・クルッツェンは、地質時代的にも1950年以降を、「人新世(アントロポセン)」と提唱した

環境問題の各国の足並み

二酸化炭素排出量順位
1位 中国
2位 アメリカ
3位 インド
4位 ロシア
5位 日本


❶.1997年 京都議定書(環境分野では初となる法的拘束力を持った条約)
アメリカ不参加、中国・インド削減義務無し
2008〜2012の5年間で二酸化炭素排出量を1990年より5%削減することを義務付けた
→アメリカの不参加、中国・インドの義務無し、削減目標が一律横並びであることに不満の声が高まり、日本を含む各国が離脱していく

❷.2009年 コペンハーゲン
リーマンショックの影響から及び腰

❸.2010年 カンクン合意
先進国と新興国との共通の枠組みが採択されたが、努力目標に留まった

❹.2015年 パリ協定(196か国が批准した法的拘束力があるもの)
平均気温の上昇を2度以下
今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質0にする


アメリカがパリ協定を離脱しようとしているわけ

2017年トランプ大統領がパリ協定離脱を表明
→シェールガス革命

アメリカは規制ではなく、イノベーションによって温室効果ガス排出量を削減しようとしている。ヨーロッパが作った枠組みやゲーム作りに抵抗している


GAFAMは環境問題に関心が強いわけ

1962年 レイチェル・カールソンによる「沈黙の春」が出版
→その影響を受け、ノルウェー学者アルネ・ネスが「ディープエコロジー」という思想を提唱。ディープエコロジーとは、人間中心主義を批判し、全ての生命体に平等の権利があるとする生命中心主義を掲げている

ディープエコロジーがアメリカに伝わると、より精神性を高め、自身のエゴを超えた大きな一つの存在である有機的全体性(大いなる自己)との接続を思考するようになる。→シーシェパードなど現代アメリカの急進的保護運動の多くが、ディープエコロジーの影響下にある

1970年代 ディープエコロジーの影響の元、西海岸で勃興した思想が「生命地域主義(バイオリージョナリズム)」である。地域の自然環境を身体で感じることを大切にし、土地の文化や歴史に根ざした生活を志向する。

パタゴニアやノースフェイスの背景にもこの影響があると言える。


ガイア仮説とプラネタリー・バウンダリー

・ガイア仮説
1960年代 ジェームズ・ラブロック(NASAの科学者)
地球を1つの生命体と捉える考え方

ラブロックは、火星の研究をしており、火星の大気が平衡状態にあるのに対し、地球の大気は平衡状態からは程遠い状態にあることに気づく。絶え間なく変化し続ける地球の自然は、生命と環境の間に発生するフィードバックループによって一つの自動調整システムを形成している。
この考え方は、生物と自然を区別し、後者を環境として捉える従来の自然観にパラダイムシフトを引き起こした
→リチャード・ドーキンスから地球を生命と見なすのは人間の錯覚でしかないという批判をされるが、反論し、地球システム科学の礎を築いた。
プラネタリー・バウンダリー
2009年 スウェーデン環境学者 ヨハン・ロックストローム
自然環境はある転換点を超えたときに、現在の均衡状態から別の均衡状態へと急激かつ不可逆的に移行すると言う事を、サンゴ礁の実験から導き出した。

自然環境は変化しようとする力には、常に反対むきの力が発生するフィードンバックが働いている。生物学で言うと、「ホメオスタシス」だが、ロックストロームはレジリエンス(回復力)と表現した。


・限界費用ゼロ社会の到来

2015年 ジェレミー・リフキン「限界費用ゼロ社会」
リフキンはドイツメルケル大統領のブレイン

限界費用とは
生産量を最小の1単位だけ増加させた時の、総費用の増加分
デジタル社会ではデータを無限にコピーできるため、コンテンツを追加生産する際の限界費用はほぼゼロとなる

限界費用がゼロに近づいた社会は、「所有」の概念が希薄化する。所有に変わって社会を駆動する原理が「共有」になる。
所有は、近代を成立させた重要な概念の一つ。
→資本主義を根底で支えていることは、共産主義のマルクスが私的所有権の否定を掲げていたことからも分かる

19世紀の革命思想家が夢見た、所有の超越。これは、マルクスが述べた資本家と労働者との階級闘争ではなく、テクノロジーによって実現されると、レフキンは言う。

・人々の意識の移り変わり

所有から共有へと主流になるにつれ、資本主義の消費と所有の欲求に駆動された精神ではなく、他者への共感が根底にある考え方を獲得する。
若い世代で、エコロジー意識が強いのは、所有から共有、共感へと広がった精神性が人間以外に対するシンパシーを呼び起こしているかではないか。


メモ
ドイツの脱原発
ドイツの隣は原発割合75%のフランス。ヨーロッパ大陸は全て同じ送電配線なので、ドイツで電力が足りない時はフランスから安い電気を調達可能

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