噛ませ犬ごはん #毎週ショートショートnote
客が食べたいものは何でも作る。それが俺の店のスタイル。古今東西あらゆる料理を知り尽くした俺に、作れぬものはない。
今日の客が注文してきたのは、噛ませ犬ごはん。聞いたこともない料理だ。だが作れないとは言えない。なんとか作り出すしかない――
「噛ませ犬ごはん、おあがりよ!」
客に自慢の一杯を突きつける。俺が幾度となく料理してきた数々の「前菜」。料理界における噛ませ犬的存在のそれらを駆使した、最高のメインディッシュだ。
「こりゃ良さそうだ。 じゃあ、連れてくるね」
そう言って、その客は店の前に繋いでいた傷だらけの大きな犬を連れてきた。
「お、おいそいつは……」
犬が皿に飛びかかり、一瞬にしてペロリと平らげた。
「負けず嫌いの子だったから、引退して噛ませ犬にしてから元気がなくてね。おかげであの頃の元気が戻ったよ!」
どうやら、想像とは違ったようだ。
しっぽをぶんぶんと振りながら、元気になった犬がワンと一鳴きした。
(410文字)
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たらはかにさんの企画に参加しています。
なかなか頭を捻りましたが、410字におさめられました。先週まで思いっきりオーバーさせちゃっていましたが、今週はなんとか頑張りました。
この店主なんでも作れるそうなので、もうお料理系お題はなんでもこの人が作ってくれるのでは?とも思いますが、そうはいかないでしょうか(笑)
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