半笑いのポッキーゲーム #毎週ショートショートnote
「今日こそアイツとキスしますわよ!」
有栖川小春は、執事に向かって、もう何度目かもわからない宣言をした。
「お嬢様、こちらをお持ちください」
執事のセバスチャンがそう言って差し出したのは、ポッキーだ。
「市井で人気の菓子にございます。これがあれば、お嬢様の目的も今日こそ達成できましょう」
「セバス、でかしたわ!」
小春は、渡された菓子を手に学校へ行く。
昼休み、食後の時間。鞄からポッキーを取り出し、袋を開け、標的を待った。
「お、ポッキーじゃん! 俺にもくれよ!」
狙い通り、意中の相手、篠原翼が声をかけてきた。しめた!小春の鼓動が早くなる。
「い、いいですわよ?ただし、私とポッキーゲームで勝ったら、ですけど!」
「ポッキーゲーム? 俺はいいけど……」
「先に恥ずかしがった方が負けですからね!」
小春は、セバスに習った通り、ポッキーの端を口にくわえ、翼のほうに顔を向ける。翼の顔がどんどん近づいてくる。あぁ、とうとうこの時が。
「ね、ねぇ、有栖川、なんでそんなニヤケてんの?」
瞬時に小春の顔が真っ赤になる。咥えた端を噛み切って、慌てて喋った。
「セバスのオヤジギャグを思い出しただけですわ!」
いうやいなや、慌てて席を立ち、教室から出ていった。
「俺も、セバスさんに習ってみようかな、オヤジギャグ」
翼は一人呟きながら、落ちたポッキーを拾ってひょいと食べた。
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たらはかにさんの以下の企画に参加しております。
先週久々に復帰しましたイサミヤです。相変わらず410字に収まらない……。皆さん文字数にかなりこだわりのある方も多いと思うので恐縮です。ご容赦ください!
それにしても、セバスはいったいお嬢様に何を教えてるんでしょうねw
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