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74.ツツジのトンネルとライトアップ
長野県駒ヶ根市の馬見塚公園は、溜池を囲む3.4haの公園です。溜池は、1864(元治元)年に起工し、翌1865年に竣工しました。さらに、この溜池に中田切川から引いた水路を、1872(明治5)年に起工、翌1873年に竣工して、400haを新田開発しました。
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1922(大正11)年には、地元の青年会が溜池周辺を運動場として整備し、翌年はサクラを植えて、1924(大正13)年に馬見塚公園となりました。古代この地は朝廷の牧として馬を飼育し、中世には馬住ヶ原と呼ばれていたので、馬見塚公園の名前が付けられました。
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馬見塚公園には、地元ではイワヤマツツジと呼ばれているホンミツバツツジが130株植えられています。著者は、2016年4月16日と2023年4月10日に訪れました。20台ほどとめられる駐車場が、公園の北側にあります。
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ホンミツバツツジは、サクラよりも若干遅く満開を迎えます。第1の魅力は、花吹雪が舞い、花筏が水面を埋め尽くす池に、圧巻のホンミツバツツジが競って咲きます。
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第2の魅力は、天幕の如く覆うホンミツバツツジのトンネルです。2023年4月10日は昼間に訪れたので、近くの小学校の児童を引き連れた若い女の先生が「ツツジのトンネルです」と言えば、子どもたちが「トンネルだ!」と言って、はしゃいでいました。
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第3の魅力は、夜ツツジです。ライトアップされたホンミツバツツジが、夜のとばりに映えます。京都府北部の与謝野町の雲岩公園のコバノミツバツツジのライトアップはありますが、これ以外にツツジのライトアップをしている場所は、管見では馬見塚ぐらいでしょう。もちろん、サクラのライトアップから始めたのでしょうが、ツツジの満開の時期まで照明を続けています。
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公園に面して旅館があります。
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ホンミツバツツジ、学名Rhododendron dilatatumの標準和名はミツバツツジと呼ばれてきました。しかし、中世に京都の華道の世界で、コバノミツバツツジの学名Rhododendron reticulatumに対して名付けられたのがミツバツツジです。さらにミツバツツジが種の名称なのか、正確にはミツバツツジ節と呼ばれるグループの名称なのか、混乱して使われています。明治初期の植物学者が混同して命名したのが実情です。このあたりの経緯は、さらに調査を進めて後日報告します。南谷らはRhododendron dilatatumに対して、ホンミツバツツジと和名を改称することを提起したので、著者はこれに従っています。
ホンミツバツツジは、雄しべが5本で、1つの蕾に3輪の花が咲きます。花筏との共演、トンネル、夜ツツジに見とれて、まともなアップの写真も撮り忘れたぐらいです。
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ホンミツバツツジの多彩な魅力を引き出す撮影の適地が、馬見塚公園です。晴れ渡っていれば、南アルプスや中央アルプスをうまく背景に取り入れて、写せそうです。
【参考文献】
南谷忠志、門田裕一、米倉浩司「日本産ミツバツツジ類(ツツジ科)の分類(1)」『植物研究雑誌』第93巻第2号、2018年4月、75–103頁、ツムラ