コラム10 天山の北桜古墳群
いつも登っている天山の西側には、北桜古墳群と呼ばれる42基の古墳が確認されています。いずれも、横穴式石室を持つ円墳です。報告書には、「不動尊のある谷付近及び北側に集中するように見うけられるが、南半分の山服の各所では著しい砂防や石の切り出し跡(砂防などに伴うか)が認められ、若干の古墳は増加するものと考えられる。34号墳等より南に張り出した尾根は、土取りにより旧状を留めないが、この尾根上にも古墳が立地した可能性が強い。」「今後、古墳群内での分布上より見た区分について検討してみたいが、50基以上の大古墳群であったと考えられる。」と述べています。覆っていた封土と呼ぶ盛り土は、1基を除いて失われています。ヘッダー写真は、天山山頂上空から西斜面を見た空景です。
著者が住んでいる天山の東側では、行政による古墳の存在は確認されていません。同じ旧菩提寺村の村域の天山の南に位置する菩提寺山には同じような古墳があります。これらの事実から、天山の東側にも古墳があるものと想定されます。ただし、明治から続く砂防工事があり、その後、石切り場やモリブデン鉱山が存在したので、その多くは壊されたものと考えられます。菩提寺山は、廃少菩提寺の史跡と指定されたこと、土地が個人所有だったこと、近代の石切り場などが設けられなかったことから古墳が残ったけれども、天山では大半が破壊されたと考えられます。
北桜古墳群は、山路も途絶えていましたが、近年野洲市のえこっち・やす山部会の人々が、登山路を整備しました。その登山路に沿って、アクセスしやすくて目立つ6基の古墳群について紹介します。古墳の内部の棺を納める部分を、玄室と言います。
希望が丘配水池から不動堂までの不動ルート上の主な古墳について記します。
15号墳:長さ約4m、幅約2mの玄室
14号墳:長さ4.8m、幅2.1mの玄室
19号墳:長さ5.1m、幅2.1mの玄室
不動堂周辺の地物です。
堰堤
不動堂
水飲み場から天山南尾根の分岐までの西尾根ルートの主な古墳を記します。
水飲み場から天山南尾根の分岐までの西尾根ルートの主な古墳を記します。
30号墳:長さ4.7m、幅2mの玄室
40号墳:長さ1.7m以上、幅1.4mの玄室
41号墳:丘陵頂部にあり壊れており不明
まだコバノミツバツツジの開花する4月に北桜古墳群で撮影したことはないので、次年度はぜひ花の咲く古墳を撮りたいと思っています。また、天山のより正確な地図をこれから作る予定です。
【引用文献】
野洲町教育委員会「野洲町内遺跡分布調査報告書」1983