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108.ツツジと史跡を守る八坂山

 岐阜県川辺町の標高225mの八坂山は、室町時代の八坂山城の城跡で、1850(嘉永3)年に濃州八坂山境内百社が造営され、参拝者で賑わった低山です。明治初期の神仏分離令によって、境内百社は取り壊されましたが、石垣、井戸、石像が残されています。城の出丸の展望台には御嶽神社が、麓には毘沙門天が祀られています。つながっている標高215mの大谷山には、大正12年に造られて113体の石仏・石像がある四国八十八箇所模写霊場があり、両山を巡る登山道が整備されています。

大谷山・八坂山 案内図より

 2022年4月15日、コバノミツバツツジは満開を過ぎていましたが、あいにくの雨の中、駐車場に車を置いて、登ります。城の出丸の展望台からは、川辺町の市街地が見下ろせます。

出丸から川辺市街を見下ろす

 この出丸にある御嶽神社から、晴れれば御岳山が望めます。この好立地を生かして、御嶽講の崇敬のための濃州八坂山境内百社が造られました。石垣に囲まれた小祠の前のあずまやには、パンフレットや説明板があります。

御嶽神社とあずまや

 川辺中学1年生自然・歴史チームの手書きのパネルには、黄色のヒカゲツツジ、紫色のミツバツツジ、ピンクのモチツツジの説明が記されています。

川辺中学1年自然・歴史チームによる八坂山・大谷山の歴史と自然の紹介

 山頂に足を進めると、川辺中学校の生徒による、ミツバツツジの種類の説明です。雄しべが、5本のホンミツバツツジと、10本のコバノミツバツツジを分類して、記していました。アカマツなど、他の樹名板もあります。

川辺中学の案内板

 低山なので、すぐに山頂に着きました。コバノミツバツツジの花はあらかた散っていて、葉が出ています。

八坂山山頂

 コバノミツバツツジよりも少し早めに咲く、ヒカゲツツジの黄色い花が、少し残っていました。

ヒカゲツツジ

 コバノミツバツツジよりも後に咲く、モチツツジが咲き始めています。

 同じく、ヤマツツジも咲き出しています。

ヤマツツジ

 まだ、残って咲いているコバノミツバツツジを、よく観察してみます。

コバノミツバツツジとトウゴクミツバツツジ

 雄しべが10本で、子房に白くて長い毛が生えている、コバノミツバツツジがありました。

コバノミツバツツジ

 いくつかの花を見ていると、花柱の付け根に腺毛せんもうがあります。トウゴクミツバツツジです。

トウゴクミツバツツジ

 ホンミツバツツジは見つかりませんでしたが、コバノミツバツツジとトウゴクミツバツツジよりも先に咲くので、散っていたのでしょう。川辺中学1年生自然・歴史チームの観察に、トウゴクミツバツツジも加えた方がよさそうです。3種のミツバツツジが自生する貴重な場所です。そしてその雑種もあるかもしれません。
 それにしても、ツツジ科ツツジ属の花が、6種類も自生している貴重な山です。史跡も貴重です。八坂山は、地元のふるさと愛好会の方々が登山道を整備して、小中学校の校外学習の拠点となってました。晴れれば、御嶽山が望め、市街地が見下ろせる、川辺町にとって貴重な里山でした。


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