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46.鞍馬の火祭の松明
投稿日の10月22日の京都は、時代祭とともに、鞍馬の火祭の日です。この鞍馬の火祭に使われる松明の燃料となる最高の柴材が、コバノミツバツツジです。そこで、2024年10月21日、松明を見に、鞍馬を訪れました。
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鞍馬の火祭の始まりは、940(天慶3)年に朱雀天皇が、御所内の由岐明神を鞍馬の地に遷座したのがきっかけです。ときは平将門と藤原純友がほぼ同時に承平天慶の乱を起こし、都の北方を鎮護するために、皇孫に国土の統治を委ねた天上神の大己貴命と少彦名命を祀る由岐明神を移したのです。御所を発った大宮人の長い遷座の行列を、鞍馬の人々は赤々と燃える篝火と松明で迎えたとされてされています。この遷座を迎える行事をもとに、鞍馬の火祭が生まれました。
由岐神社は、鞍馬寺の本殿金堂に登る途中にあります。神社で聞くと、「神社の祭りですが、ここには松明があがらず、鞍馬寺石段に松明を奉納します」と教えられました。
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その、松明を奉納する、鞍馬寺石段です。翌日の祭りの設えが見られます。
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祭りのときは、石段から街道沿いの由岐神社御旅所まで、神輿と松明が移動します。
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篝と呼ぶ、アカマツの燃料材の上に木々を載せた台が、石段や御旅所に設けられていました。
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各家の前には、小さな篝用の薪と、防火用のバケツや樽が、並べられていました。
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松明には、地区ごとにつくる神楽松と、各家でつくる松明は、大、中、小、トックリがあります。
4つの地区があるので、神楽松は4本準備されています。4~6人がかりで、ツルをつかみ、下に棒を当てて担ぐとのことです。その昔は、神楽松は16本あったと伝えられています。
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松明は各家庭でつくり、男が担ぎます。100kgほどの高校生・大人用の大、60kgほどの中学生用の中、30kgほどの小学生用の小、幼児用のトックリがあります。これらも、一人で持つのは無理なので、複数人で持ちます。子どもが松明の先を手をかけて、実際は後ろで大人が持つこともあるようです。2024年度の松明は23本とのことです。駐車場を管理していた老人は、「若いころは50本以上の松明が出た。我が家は男の子が4人も生まれたので、4本も松明をつくった」と言ってました。
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外は杉板、芯がアカマツ、その間の縄でまかれた束がコバノミツバツツジの枝で、担いだり垂直に立てるためのロープが藤の根のツルです。
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老人はまた「昔は林業をやっている家が多かったので、そういった人々が材料を準備した。自分は市内に働きに行っていたが、祭りの前1週間は仕事を休んだ。祭りが終わると、節々が痛くて体が動かなくなった。杉の板をつくり、藤の根のツルを掘り、ツツジの柴を集めた。松明の外の杉板は、最近しばらくはべニアを使ったが、中の柴が滑るので、昨年から製材所で加工してもらった杉板にした。藤の根は、近在にほとんどないので、滋賀県まで掘りに行っている。ツツジの柴も、専門の業者に頼んで、遠くで集めてもらっている」と、言ってました。
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京都モデルフォレスト協会の記事によれば、「木肌の美しいコバノミツバツツジはすらりと伸びてまとめやすく、ゆっくりと火が燃えるため、松明として最上とされます。」と記されています。
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松明を取り囲む杉板、芯のアカマツ材、主たる燃料のコバノミツバツツジ、担ぐときも立てるときも丈夫で弾力性に富んで扱いやすい藤の根のツルをうまく組み合わせて、松明はできています。山に囲まれている鞍馬は、昔から都の用材・燃料材を担う林業が盛んな土地なので、木の特性を生かした素晴らしいコバノミツバツツジの松明がありました。コバノミツバツツジは、炎の花も咲かせるのです。
京都モデルフォレスト協会「森が支え、人が伝えてきた灯り 鞍馬の火祭」以心伝心 2017 No.39