34.児童が花につつまれ大黒山
福井県で最大のコバノミツバツツジの群生地は、小浜市の大黒山だと思われます。小浜の中心部から国道162号を進み、途中の口名田橋で右手の南川を渡って、左に折れて旧道を進みます。すぐに着く口名田コミュニティセンターの駐車場に車を置かせてもらいます。登山口は、すぐ手前の口名田小学校の左手です。
著者は2023年4月13日と、2024年3月31日に、大黒山に登りました。ほぼ地元の人しか知らない山で、コバノミツバツツジが群生していることがあまり知られていませんが、口名田小学校の児童が登る学校の裏山です。地元の人が山路を整備し、児童が案内板をつくっている、地元密着の山です。
標高30mの入り口には、ファイト大黒山登山と書かれた案内板と、児童がみんなで書いている日記帳が入っています。
橋を渡り、戦没者慰霊碑を見て、右手に折れて登ります。山路は急坂で、滑りやすい場所には、地元の人がロープが張られています。少し登ると尾根路になって、コバノミツバツツジが山頂まで続きます。残念ながら2023年4月13日は、ほぼ散っていて、山頂に散りかけた株が残っていました。10分ほどで岩場の見晴らし台につくきます。
南川や口名田集落を見下ろすことができます。
急坂の尾根路をさらに25分ほどロープを伝って登ると、標高250m、児童が名付けたスマイルトンネル広場、略称スマトン広場になります。児童の登山の休憩場所ですね。
ここからつづら折れの尾根路で、さらに急登になります。また35分ほど登ると、標高380mの大黒山山頂に着きます。山頂は、眺望は開けていませんが、コバノミツバツツジが群生しています。
一旦尾根を降りてミズナラの林を抜け15分ほどで、標高413mのボンハタ頂上の手前から若狭湾の眺望が開けます。
2023年4月13日に降りてきたときに、登山口で出会った地元の人は、「今年のツツジは3月中に満開が過ぎて、散ってしまった。これほど早い年は初めてだ。今年、天変地異か何か災害でも起きるのではないかと不吉になって心配だ。」と語っていました。著者も、若狭で災害が起きないか心配したぐらいです。何もなく年末を迎えてほっとしたところ、2024年新年早々能登が地震に見舞われました。
帰りに、口名田小学校に立寄って、ツツジのパンフを校長にお渡ししました。校歌に「ウグイスうたう 大黒山 花につつまれ考える」という一節もありました。
2024年3月31日はリベンジ登山です。何とか山路の写真が撮れました。ロープがあるのでうれしいですが、滑りやすいので、トレッキングシューズは必須ですね。日本海側の北にあって春が遅い大黒山ですが、著者が住んでいる標高が等しい滋賀県の中央部よりもコバノミツバツツジの満開が10日ほど早いです。これは、より暖かい太平洋岸の最も早く開花する地域とほぼ同じです。一般的に、標高が高い方が開花・満開が遅くなりますが、標高が比較的低い場所では同標高でも、開花時期に10日ほどの差が出る理由は、よくわかりません。
上部だけでなく、全体に蜜標がある花弁もありました。花の姿に地域差がありそうですね。
コバノミツバツツジの時期、下山後に、口名田集落を少し上流にいくと、140年前に檀家が植えたという、小浜市の天然記念物、妙祐寺枝垂れ桜、樹高20mが見事に咲いています。
ほとんど知られていない隠れたコバノミツバツツジの名所ですが、地元の方の労力のもとで、児童が愛着を持って登っている綺麗な里山として、大黒山をおススメします。