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80.檜洞丸のツツジ新道を登る

 神奈川県の丹沢山地で4番目に高い、西丹沢の標高1601m檜洞丸ひのきぼらまるは、トウゴクミツバツツジとシロヤシオが有名です。西丹沢ビジターセンターから檜洞丸ひのきぼらまるまでは、ツツジ新道という登山路の名前がついています。丹沢山地は、丹沢大山国定公園に指定されています。
 地質は、ビジターセンターあたりが花崗閃緑岩・トーナル岩(花崗岩の一種と捉えてよい)、山頂あたりが玄武岩です。植生は、1100mより下がクリーミズナラ群落、その上がヤマボウシーブナ群集です。

案内板の地図を加筆修正

 2021年5月22日、雨模様でしたが、西丹沢ビジターセンターの駐車場は満杯で、かろうじて1台とめられました。この季節は、雨でもツツジを目当てに登る登山者が多いです。ツツジ新道は、川を渡る場所以外ずっと登りで、急斜面には階段があって、歩きやすいです。
 1000mあたりから、トウゴクミツバツツジが咲いています。

ツツジ新道のトウゴクミツバツツジ

 雨や霧の日は、水滴がしべや花弁に並んで、珠玉の水滴をしたためています。

トウゴクミツバツツジの

 シロヤシオの巨木が多く、トウゴクミツバツツジと同時期に満開を迎えています。

ツツジ新道のシロヤシオ

 神奈川県の水源環境保全税を用いて、登山路の登りやすい構造型階段と、シカ除けの植生保護柵が整備されています。

神奈川県の水源環境保全税の説明板より

 シカ除けの柵が立てられています。

見えにくいが柵のポールの間に網がある

 雨が止んできて、木々の間から富士山が顔をのぞかせました。

富士山

 山頂に到着です。少し先に降りると青ヶ岳山荘がありましたが、空いていませんでした。

檜洞丸ひのきぼらまる山頂

 山頂に戻りましたが、北側の、熊笹ノ峰、大コウゲ、小コウゲ、犬越路いぬこえじを通る路は、通行が困難だという掲示もありました。2・3人のソロと話してツツジ新道を戻ろうかとも思いましたが、犬越路いぬこえじに向かう人もいます。当然この路にもトウゴクミツバツツジが多く咲いているので、思い切って向かいました。
 熊笹ノ峰、大コウゲ、小コウゲの山路は、細くてアップダウンがありますが、特に問題はないです。尾根路には、風にあおられたからでしょう、枝を横に這わしたトウゴクミツバツツジが続きます。

熊笹ノ峰に降りる路沿いのトウゴクミツバツツジ

 斜面にあるのはもちろん、枝を傾けています。

トウゴクミツバツツジ

 山稜でのこういった自然が造った造形の枝ぶりが、魅力的です。

トウゴクミツバツツジ

 シロヤシオも、見事に咲いています。

シロヤシオ

 サラサドウダンも見つけました。

サラサドウダン

 犬越路いぬこえじあたりは、ヤマツツジが満開です。

ヤマツツジ

 犬越路いぬこえじから沢路を下ると、台風19号で崩れた場所があったようですが、ほぼ修復されていました。ただし、雨で増水して、橋が流されていたこともあったので、裸足で徒渉しました。

アベックは靴を履いていますが著者はトレッキングシューズを脱いで素足で徒渉

 西丹沢ビジターセンターの展示は、充実しています。西丹沢の歴史をしっかりとした年表で紹介しています。早1970年頃には既にシカの増加で、農林業や植生の被害が出てきたことには驚きました。

西丹沢の歴史  西丹沢ビジターセンターの展示より

 「一番人気はつつじの花」とされて、前年のトウゴクミツバツツジとシロヤシオの、前年の満開の時期も記されています。「丹沢ではニホンジカが食べないので樹林の中で目立つようになってきました」と記されており、職員にも確認して事実だと言われました。実はその2日後の5月24日に、山梨県のハンゼノ頭を訪れた帰りの昼食の食堂で、「ハンゼノ頭はトウゴクミツバツツジが満開でした。」「そうですか。昔はツツジ祭を開くほど咲いていたけれども、その後シカに食べられたので祭はやめたのですが。」と言われました。当時は、一体どちらが正しいのかと戸惑いましたが、シカはうまいものから食べて、食料がなくなると、当然ツツジの小枝も食べ、トリカブトなどの人にとっての毒草も食べるとのことです。ネギ等は、消化酵素を持たない犬猫にとって毒ですが、人間にとっては美味い食材になります。トリカブトの毒を、シカは消化できるのでしょうか。

一番人気はつつじの花  西丹沢ビジターセンターの展示より

 雨模様とはいえ、最上のツツジの道を堪能しました。


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