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17.御祓山の花回廊

 野性味あふれる姿で続々と迫ってくるコバノミツバツツジを見ながら登る山として、著者が最もおススメできるのが、兵庫県養父市大屋町糸原の御祓山みはらいさんの花回廊です。
 我が家の庭のコバノミツバツツジは、それなりに元気ですが、手が入って野性味が少し不足しています。コバノミツバツツジが群生する名所では、こうやく病などにかかった弱った株が多い例もあります。人の手で、絡まったツルや、雑木・雑草を刈り取って守られているので、弱い株が残るのは仕方がないことです。

こうやく病で弱っているコバノミツバツツジ
場所はお教えできませんが、御祓山にはこのような株は見かけません

 しかし、御祓山みはらいさんは、急な斜面で、それなりの積雪もあるり、他の樹木との競争の中で枝を曲げながらも、たくましく生き残っているコバノミツバツツジの群生地です。人があまり手を入れない自然の山で、明るい太陽が降り注ぐ場所を求めて枝を伸ばし咲くがゆえに、どの株の花も葉も元気です。

 2019年4月20日、前泊した豊岡で起床し市内1か所で写真を撮った後、糸原の駐車場に向かいました。駐車場の入口で、「今年のみづめ桜は当り年。今丁度、満開です。あちらを見てください。」と山の上を指して言われました。養父市指定天然記念物「糸原のみづめ桜」が、遠望できました。

説明板

啓白

此の地より十六丁三十一間一尺余り登りたる処 目の寸十八尺余りの古木みづめ桜あり。其の姿嫣然えんぜんとして優婉ゆうえんなる様は、山気を吐呑とどんし、山谷を圧するの風格有と言はむも故あるべし。亦其の桜に至る秘境のツツジ其の数一万有余本にして、九十九つづら折りなす道々に咲きたる花、此れ亦見る者をして驚嘆きょうたんの思い有れば、一覧を勧むる所也。

糸原区保存会一同
前田華汀謹書

 みづめ桜であり、そこに至るコバノミツバツツジの花回廊の山路を、地元の糸原区の人々が大切に整備しているのです。
 古木のみづめ桜は、しなやかにほほえみかけ(嫣然)、やさしくしとやか(優婉)な風格があるのです。
 桜に至る秘境のつづら折りの山路に、万を超えてツツジが咲き誇る姿は、おどろいてため息をつく(驚嘆する)のです。
 野仏に見守られて山路を進みます。

野仏

 急な路沿いに、株が連なって咲きます。

斜面に連なっている

 風雪に耐えて、横倒しの天然の懸崖づくりの株になります。

天然の懸崖づくり 風雪に耐えている

 ちょうど満開時、どの花も半端なく、紅紫の透明感が出ています。

前姿と光を受けた後ろ姿

 早咲きの株から出た三つ葉も、新春の緑です。

新緑の三つ葉が生き生きと輝いている

 1時間ほどで、標高570mの、スギ林に囲まれたみづめ桜に到着しました。樹高15m、幹回りは4.25m、樹齢は約500年と推定されているエドヒガンです。 隔年で花付きがよくなり、特に2019年は大当たりでした。行きついて戻る地点に桜があり、花回廊にふさわしいルートでした。

みづめ桜

 その後、滑落事故もあったそうで、保存会では山路をよりしっかりと整備したとのことです。糸原の花回廊を登るには、滑らないトレッキングシューズを履き、何よりも開花時期を事前に調べることです。エドヒガンは外れ年がありますが、コバノミツバツツジはほとんど外れがないです。もしかしてより自然に自生する場合は、外れがあるのかもしれませんが、少なくとも著者は経験していません。
 ただし、2024年に信州で類縁種のトウゴクミツバツツジがまったく外れて葉ばかりなのを体験しました。その山で「去年はすごかった」と言われたのですが。ぜひ満山濃い紅紫に包まれるトウゴクミツバツツジを見たいから、来年再訪して記事にする予定です。


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