88.岩壁に咲くヒュウガミツバツツジ
宮崎県延岡市にも、京都府・滋賀県との境の有名な山と同名の、比叡山があります。標高760mの比叡山は綱の瀬川を挟んで対面する標高666mの矢筈岳とともに、デイサイト・流紋岩でできた山です。デイサイト・流紋岩は、二酸化ケイ素が多いガラス質の火山岩で、水が浸みこみにくい固い岩です。ただ、比叡山と矢筈岳は、元々綱の瀬川が通っていた場所で隆起したために、綱の瀬川に削られて、両側に切り立った山が生まれました。このように、川によって削られた山の地形はウォーターギャップと呼ばれており、1939(昭和14)年に、国の名勝に指定されました。
2021年3月24日、比叡山に到着すると、対面する矢筈岳とともに、標高は高くないですが切り立った岸壁に圧倒されました。ロッククライミングのメッカということで、欧米人の男女が、ロープをかついでクライミングルートを登り始めていました。
植生図では、斜面の山麓はシロバイーコジイ群落、中腹はイスノキーウラジロガシ群集、山稜はアカマツ群落とされています。ただ、ドローンを飛ばすと、岩肌の間の緩斜面に、何とか樹木が生えており、急斜面では露岩の方が多いことがわかります。
南側登山口に車を置いて、急坂を登ります。急斜面ですが、ロープが整備されていて、比較的登りやすいです。
比叡山には、ヒュウガミツバツツジ、アケボノツツジ、ヒカゲツツジなどが咲きます。ヒュウガミツバツツジは、ハヤトミツバツツジ同様に、他のミツバツツジより先の3月に満開を迎えます。またヒュウガミツバツツジは、宮崎県を中心に隣接する県の岩場に集中的に分布しています。
登山路から見える向こう側の岩の隙間から、ヒュウガミツバツツジが枝を伸ばして、花を咲かせています。
登山路沿いの岩場の満開の株です。
岩場からは、下をのぞき込むと、下界にはサクラがそこここに点々と咲いています。
比叡山山頂に着きました。東側の奥にも、切り立った岩場が続きます。この尾根路沿いに、アケボノツツジ、ヒカゲツツジが多いとのことですが、時期が早くまだ咲いていません。
北側登山口に向かって降りていきます。岩の上に、アカマツとともにしがみついているヒュウガミツバツツジです。
切り立った岩の横にアカマツとともにしがみついているヒュウガミツバツツジが、遠くに見えます。
岩の隙間に根を張り、横に伸びた懸崖のヒュウガミツバツツジです。
登山路沿いにも、花付きの良い株がありました。1つの冬芽に1輪または2輪で咲いています。
子房には腺点があって、粘ります。
葉の長さは、他のミツバツツジと比べても3cmほどと小さいです。
ロッククライマーにも人気の岩壁の比叡山と、岩場に自生して乾燥にも強いヒュウガミツバツツジに驚かされた、山旅でした。