53.八千穂高原の貴婦人と貴公子
長野県の八千穂高原には、高原の貴婦人、高原の貴公子と、固有名詞が与えられているトウゴクミツバツツジがあります。栃木県八方ヶ原にある、小間々の女王というトウゴクミツバツツジとともに、管見では固有名詞で呼ばれている株は他には見当たりません。ミツバツツジ類の中には、群生とともに、個体に対して天然記念物に指定されている株がありますが、その場合でも地名が記されているだけで、他には固有名詞が与えられている株が確認できません。
さすがに固有名詞がついていると、これを狙って多くのカメラマンが集まります。まともなカメラを持って貴婦人の方を訪れると、こんにちはといった挨拶抜きでにいきなり「貴公子はどうでしたか」という会話が交わされます。2024年は外れ年だったので、「自然園の人は、昨年(2023年)は大当たりですごかったけれども、今年はさっぱりですと言われた」と話しかけられます。
八千穂高原には、200haの敷地に50万本のシラカバが立ち並んでいます。その中に、高原の貴婦人、高原の貴公子が、凛と輝いています。
2019年5月23日、2019年5月26日、2020年5月29日、2024年5月17日の開花時に訪問して、2024年10月25日の秋に訪問しました。
2019年5月23日は、八千穂高原自然園に入園して散策します。まだ早すぎて、大石川のダム湖である標高1525mの亀遊湖沿いに少し咲いていました。
園外に出て、高原の貴公子に向かいましたが、蕾でした。
3日後の2019年5月26日、高原の貴公子は咲始めました。
クマザサをかき分けてシラカバ林を進むと、名前はついていないけれども、忽然と現れる大きな株もあります。
高原の貴婦人はまだまだ蕾です。高原の貴公子の方が、高原の貴婦人よりも5日ほど開花が早いです。
2020年5月29日は、高原の貴婦人に再チャレンジです。
上から眺めると、シラカバに囲まれていることがよくわかります。
2024年5月17日は、水辺にチャレンジです。標高1506mの八千穂レイクの周りを散策しました。八千穂レイクは、1973(昭和48)年に造られた面積3.7haの農業用溜池です。ニジマス、ブラウントラウト、イワナが放流されており、釣り人が多いです。トウゴクミツバツツジを見つけても、湖面といっしょに写る場所は少なかったです。
そこで、キャンプ場が周りにある標高1300mの駒出池に下りました
2024年10月25日は、紅葉と蒴果の撮影です。霧の中を進むと、高原の貴婦人はさっぱりでしたが、その前にある小さな株が、綺麗に紅葉していました。
蒴果も実っています。
八千穂高原の1912年の地形図を見ると、池ノ平牧場の草地になっています。シラカバは陽樹で、放置された草地の後に、先駆的な樹木として50万本も群生したのだと判断できます。そして、その日本一群生しているシラカバの明るい林の中に、トウゴクミツバツツジとともに、レンゲツツジ、ヤマツツジ、サラサドウダンツツジなどが散在して生えてきたのです。著者は撮影できていませんが、6月にはレンゲツツジ、ヤマツツジ、サラサドウダンツツジも咲きます。
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