90.キリシマのツツジ旅
鹿児島県と宮崎県にまたがる霧島は、キリシマツツジ、ミヤマキリシマ、キリシマミツバツツジなど、ツツジの名前を冠する原産地です。真っ赤なキリシマツツジは、江戸時代初期には上方から江戸まで普及した園芸種です。ミヤマキリシマは、牧野富太郎が発見したキリシマツツジの原種です。キリシマミツバツツジは、サイゴクミツバツツジの変種です。キリシマミツバツツジは、霧島山と、鹿児島県の薩摩半島や大隅半島の山に分布しています。
キリシマミツバツツジは、2011年に噴火した新燃岳の北へ登る獅子戸岳との間の登山路沿いに、ツツジのトンネルができるほど群生していました。新燃岳は、1991年から小規模な噴火を繰り返し、2011年にはマグマ噴火がおこり、火口から2kmの群生地への立ち入りが禁止されています。
霧島山全体が各所で、少なくとも34年前から噴火を繰り返しました。
そこで、新燃岳に次ぐキリシマミツバツツジの多い場所として、標高1353mの大幡山に挑みました。ふつうは開花情報など電話では確認しないのですが、事前に高千穂河原ビジターセンターに電話をして、滋賀からの訪問予定をたてました。2024年4月28日朝7時、宮崎県小林市にあるひなもりオートキャンプ場のゲートに着きます。ゲートが閉まっていて、8時30分開場の掲示があり愕然としました。幸い30秒もせずに、タイムリーに係員がやってきて開場してくれて、ほっとしました。山は、朝早くから登らなければ危険ですから。
広い広場の横にある駐車場は、標高670mほどです。大幡山の基盤は、溶岩・火砕岩の安山岩・玄武岩質安山岩で、その上に周辺の火口から排出された火山礫・火山灰が積もっています。
スギ・ヒノキの植林やモミ-シキミ群集を抜けて、標高1100m辺から、林の中にキリシマミツバツツジが現れます。
大幡山と丸岡山の分岐にを過ぎて、ミズナラ-リョウブ群落、シラキーブナ群集の大幡池の東の稜線を進みます。
見上げると、キリシマミツバツツジが山路を覆っています。
ミズナラの林の中に、キリシマミツバツツジが満開です。稜線から離れて少し降りて、斜面で撮影します。
霧島の霧で、花弁もしべも、水滴で包まれています。雨天なので色まではっきりとはわかりませんが、少し桃紅がかっていそうです。
蕾は凛と立っています。
大幡山に近づくと、ミヤマキリシマ-マイズルソウ群落となり、山路はミヤマキリシマの多い茂った薮路になります。ミヤマキリシマを傷つけたくないですが、進むために仕方がなくかき分けます。一月もたつと、この周りは、ミヤマキリシマが咲き乱れるでしょう。
1352mの大幡山山頂にたどり着きました。ここまで、10名ぐらいの登山者と話を交わしたと思います。皆さん、ミヤマキリシマが咲いたときの話をしてくれました。
なかなか霧が晴れない中、標高1241mの大幡池に向かいます。大幡池は、1万1千年前から6300年前まで水蒸気爆発の噴火でできた池です。晴れていると濃紺の水面とのことですが、霧島だけあって、霧が濃くなったり薄くなって対岸が見え隠れします。
山の方を振り向くと、ミズナラの中に、幻想的なキリシマミツバツツジが 斜面で力強く咲いています。
行きの路をピストンで降り、高千穂河原ビジターセンターを訪れました。電話で対応していただいた職員にお礼の言葉を述べて、話を聴きました。
日本初の霧島国立公園が、斎藤茂吉、与謝野鉄幹、与謝野晶子、野口雨情と言った文人によって、天孫降臨の場所と比定される霧島を称賛したことが、展示からわかります。
ツツジで有名な霧島を、名のとおり霧の中に訪れて、満喫できました。