26.滝山公園 小泉八雲の幽霊滝の舞台
鳥取県で最大のコバノミツバツツジが群生地は、日野町の滝山公園です。花崗岩の山の斜面に、コバノミツバツツジが公称3万本咲いています。
標高370mの所に駐車場があります。そこから400m、杉と天然林の大木の参道の石段を330段登ると滝山神社があります。御神木は、社殿の横にある幹周6.5mです。
社殿の裏手に落差50mの龍王滝があります。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が伝説をもとに書いた『骨董』の中で、龍王滝を幽霊滝として紹介しています。
以下に、幽霊滝の話を要約します。
35年前の黒坂村の話、ある冬の寒い晩、仕事が終わった後、女たちが麻取場に集まって怪談話をしていた。そのとき一人の娘が、「今から幽霊滝に一人で行ってみたらどうだろう」と言った。皆は恐ろしくなったが、一人が「幽霊滝に行った人に今日取った麻をすべてあげる」と言い出すと、一同が賛成した。それを聞いて、安本お勝が「麻をもらえるならば幽霊滝に行く」と言った。行ってきた証拠に、神社の賽銭箱を持ってくることになった。お勝は2歳の赤子を背負って、幽霊滝に向かった。
幽霊滝で賽銭箱に手をかけると、「おーい、お勝!」「おーい、お勝!」と恐ろしい大声を2度かけられる。恐怖に震えながらも、お勝は賽銭箱を急いで持ち帰った。麻取場に戻り、二度も名前を呼ばれたことを皆に伝えると、麻をあげるだけの度胸があることを、皆は称賛した。一人の老婆が、「寒かっただろう」といって、背負った赤子を取り出そうと手を取ると、頭がもぎ取られていた。
滝山公園の中には、お勝が背負った赤子の首を天狗にとられて、悲しみの涙でできたと伝えられる「お勝ヶ池」があります。
確かに滝山神社と龍王滝の鬱蒼とした杜の中は暗くて不気味です。しかし境内地にあたる滝山公園は、山の斜面全体が伐られて、明るく開けています。滝山公園では毎年4月下旬に、つつじまつりが開かれて、出店も出て、多くの人でにぎわいます。
著者は、自宅から遠く、他のツツジ群生地と離れていましたが、滝山公園が気に入ったので、2017年4月22日、2004年4月16日、2022年4月24日、2023年4月20日、2024年4月20日と5回も訪問しました。自生地ですが、一部は苗木を植え足しています。
道路に近い下の平坦地は、芝生がよく刈り込まれています。
あずまやが2棟あります。
斜面の上の方には、何本もの散策路があり、コバノミツバツツジを見ながら眺望が楽しめます。ただし、草刈りが不十分な山路もあるので、トレッキングシューズを履いていくことをおススメします。
ネットでは、滝山公園にはダイセンミツバツツジが3万本と記されている場合がありますが、コバノミツバツツジの誤りです。数年前まで日野町のホームページにもダイセンミツバツツジと記されていましたが、今では訂正されています。
ダイセンミツバツツジは、山の斜面を北側に降りて行った場所に、数株咲いていたのを確認しています。コバノミツバツツジは紅紫色、ダイセンミツバツツジは桃紅色です。
参考文献
幽霊滝の伝説 青空文庫 「小泉八雲全集第八卷 家庭版」第一書房 1937 より
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