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38.ツツジの低山 小岱山

 熊本県のコバノミツバツツジの山といえば、山体が花崗岩でできている小岱山しょうだいさんです。北から、標高488mの長助金比羅、標高501mの筒ヶ岳、標高403mの観音岳、標高391mの丸山と続く山並みが小岱山しょうだいさんです。面積 45.96㎢が小岱山県立自然公園に指定されています。縦走路は九州自然歩道として整備されており、歩きやすい山です。

小岱山るーと図

 「しょうだい」の名は、鎌倉初期の律宗の僧の俊芿しゅんじょう(大興正法国師)が、中国留学から帰国後に、中国の泰山に似ていることから、小さな泰山という意味で、小岱山しょうだいさんと命名したという説や、武蔵国 小代しょうだい郷から移ってきた 小代しょうだい氏にちなんだという説などがあります。

 著者は、2021年3月25日、2022年4月22日、2024年4月13日の3回、小岱山しょうだいさんに登りました。最初の2021年3月25日は、小岱山しょうだいさん駐車場のある、中央登山口から登り筒ヶ岳、長助金比羅を回ってきました。時期が早くて、コバノミツバツツジは開花していない状態でしたが、地元の登山者が、咲いていそうな枝道を教えてくれました。

季節が早すぎる2021年3月25日でもなんとか咲いていた

 最高峰の筒ヶ岳から長助金比羅までは、 小代しょうだい氏が城主となった中世の筒ヶ岳城になっています。

筒ヶ岳山頂

 このため、筒ヶ岳、長助金比羅、その間に複数ある曲輪くるわは平坦化されていますが、曲輪くるわの間の 堀切ほりきりは防御のために急坂になっています。

筒ヶ岳山頂から有明海を望む

 2022年4月22日、2024年4月13日は、小岱山しょうだいさん駐車場から筒ヶ岳に登り、観音岳、丸山から、小岱山しょうだいさん国民保養地駐車場に降りてきました。観音岳山頂は広い芝生広場となっており、その周りには花付きのよいコバノミツバツツジが咲いていました。

観音岳山頂は芝生広場とコバノミツバツツジ

 丸山の丸山展望所には、あずまやがあります。ここでは園芸ツツジのヒラドツツジが植えられていたのは残念です。

丸山展望所のヒラドツツジ

 国民保養地駐車場の横には丸山キャンプ場と、展示が見られる小岱山しょうだいさんふるさと自然公園ビジターセンターがあります。小岱山しょうだいさんのジオラマなどが展示されています。

 上原三知らは、小岱山しょうだいさんを調査して、樹高3~4mのヤマツツジとコバノミツバツツジの開花調査をしています。3ヶ所が両方のツツジ、3ヶ所がヤマツツジのみ、5ヶ所がコバノミツバツツジのみ、2ヶ所が両方のツツジがない計13を調査区としています。花芽が形成される2004年6月上旬に気温と相対照度を計測して、翌年の着花数を数えました。相対照度とは、完全に開けて他の樹木がない場所を100%としたときの値です。結果は、「相対照度が、23.8%と最も明るい林内での着花数が最大となり、相対照度が4%以下の場所では、ほぼ着花がみられずツツジの枯死木が増加し、1%台の暗い林内では固体すら確認できなかった。」「コバノミツバツツジは特に痩せ地、急斜面に分布し、ヤマツツジはさらに傾斜が緩やかな場所まで広く確認できた」としています。調査から15年以上たっているので、ますます常緑樹が茂ったこともあるでしょうが、著者が確認したところ、相対照度23.8%でも、そこまで着花数は多くないと思います。もっと明るい森であってほしいです。

散策路の相対照度が明るい場所

 また「ヤマツツジは、花芽分化が開始する6月上旬の最高気温が低い場所ほど、コバノミツバツツジは最高気温が高い場所ほど着花数が多い傾向にあるといえる。・・・1日を通じて気温が低い冷涼な環境でヤマツツジが良く着花し、日中は気温が高いものの夜間は低くなる日当たりと風通しが良い環境でコバノミツバツツジが良く着花する傾向にあると考えられる。」としています。これはまだまだ定説ではなく、他地域でも検証する必要があるでしょう。

アカマツやコナラの下で何とか着花しているコバノミツバツツジ

 「自生するヤマツツジやコバノミツバツツジが優先する場所においては、散策路沿いの除伐に加えて、隣接しる林内環境まで含めた高層木の間伐や競合する常緑広葉樹の除伐作業が必要といえる。」と提案しています。しかし、山頂の広場や散策路にはみ出た木や枝は伐採するにせよ、常緑広葉樹の除伐はされていないようなので、ヤマツツジとコバノミツバツツジは年々少なくなっていると考えられます。暖温帯では、花崗岩の山でも放置するとすぐに常緑樹が茂って鬱蒼とした森になる現実を見て、行政として手が回らない自然公園の森林管理について考えさせられました。

上原三知 、重松敏則 「九州の二次林におけるヤマツツジおよびコバノミツバツツジの着花数と環境条件との関係 ランドスケープ研究」 2006 p593-596


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