私と天然水
ほんの少しだけ、こだわっていることがある
私にはそういうちょっとしたこだわりやルールがたくさんある
独特な感覚の持ち主のようで他人からはなかなかに気味の悪い話
自分でもこだわりの理由が謎であることぐらいはわかっているけど
いつだってホクホクしているのさ
そんな私のここ最近になって新たに追加されたルーティンを１つ
ソレとの出会いは2ヶ月ほど前だろうか
独特なPOPが購入意欲を刺激してくる地域の名物スーパーに行った
常に攻め攻めなハイセンス、色々とギリギリなワードを並べたりして
ずいぶんとやりたい放題している自由なスーパー
買い物が目的なのかクセ強POPを掘り出しにいくのが目的なのか
わからなくなるようなそんな面白い場所でソレと出会った
軍艦マーチのようなBGMが流れ、気持ち的にも急かされる
特に飲料売場においては陳列するのが面倒だとでもいうように、段ボールに入ったままの状態で投げ売りされている
一応何本かは冷やしておくから勝手にとっていってよねと気持ち冷蔵庫に陳列されている程度で、みな箱ごとカートに入れてボンボン買っていく
以前からこの暴力的にも思えてしまうような箱の積みかたにグッと来ていた
鬱陶しいほど至るところにクセ強POPが張り巡らされている見た目が色々とやかましい店内で、ソレは美しく凛としたたたずまいでひっそり立っていた
POPさえない、店員が一瞬血迷って入荷してしまったのかもしれない
冷蔵スペースの片隅でたった１本残っていたソレは
誰にも気づかれないところできれいに咲いている花のように思えた
私はソレを一目みて心臓をグッと鷲掴みにされてしまった
こんなフォルムはみたことがない
なんだこの美しいペットボトルは！手に取るとなんて華奢な身体なんだろう、ちょっと強く握ったら折れてしまいそうなほどに！！
そして青を基調としたシンプルなパッケージ…
人生でこれほど美しいペットボトルに出会ったことはないよ！！
中身が富士山の天然水？？そんなのはどうだっていい飲んでもわからん
日本の水がまずいわけないんだからおいしいに決まってる
それよりこの完璧なシルエットに一瞬で恋に落ちてしまった
実におしゃれである、都会的である
華奢な身体つきに清々しい（当然だけど）透明感は完璧なスタイルだった
ご存じの通り、あるいはご想像の通り過度なナチュラル志向なんかは持ち合わせていないが、東北で生まれ育っているのでいたって普通にきれいな水は好きだ
天然水などわざわざ買わなくても湧き水を飲める環境にいる
蛇口をひねればそれなりにおいしい水がでてくる地域にずっと住んでいる
私のなかでは店で水を買うという概念はなかった
それがどうだろう、気づけば箱ごと買うつもりで在庫を探している自分がいる
どこだ！！どこにある！！出せ！！！いますぐ出せえええええ！！
一瞬の気の迷いで仕入れたからか、在庫はなかった
在庫があればあるだけ買い占める気でいたのに、残念極まりない
すぐに手元の秘密道具で密林にアクセス、値段など見ずに光の速度で注文した
こいつを持って歩いているだけで都会のデキル女子になった気分だ
こいつをバッグに入れて都会のビル街を颯爽と歩くキャリアウーマンだ
仕事中、喉が乾いたら何気なくスッと取り出して口をつける
そんな姿をイメージしてひとりグッときてしまった
飲み終わっても愛しくていたわしい
空になっても眺めていられる、どうしても捨てられない…
そうだ、飲んだ順にデスクの上に並べてみようか
ああすごくこれも美しいかもしれない、これはこれでなにか美術作品のようだ
１日１本、仕事終わりまでに飲み干していけば１週間で５〜６本になる
そうすると巨大な石柱が立ち並ぶ古代ギリシア神殿のようにも見えてくるだろう
デスクの上に世界遺産があるなんてromanticでグッと来る
パソコン作業なんかで目がつかれたときには古代ギリシア神殿を眺めてうっとりすると疲れも吹っ飛ぶじゃないか
これは私の小さな儀式になっている、ああそうか神殿だから宗教施設であってる
神聖すぎて簡単には捨てられないのだ、バチが当たる
だってそびえ立つ彼らは戦う私を守護するギリシアの神々
「今週はなに神殿にすんの？」と話題にもなるしね
中身は水だったわけだし、乾いているので数日置いても臭いはないけど
さすがに１週間単位で神殿は立て替えることになっている
お休みの前日、泣く泣く神殿を１石柱を残して破棄するのだ、ああ寂しい
古の神々との別れはつらい、全員居なくなるのはあまりに心細い
１本だけは翌週の私を迎え入れてほしい、そのために残している
なので週に７本、７つの神々を順番に祀っていくのが私のこだわりとなっている
到底理解されないが尊重はしてもらっているように思う
今週はへーパイストス神殿（へーパイスティオン）完成間近となっている
特に世界遺産について詳しいわけではない、いちいちネット検索している
周囲のみなさま、大変ご迷惑をおかけしておりますがお付き合いくださいませ…
いやごめんて、ほんとごめん