発見!! MIDI端子なしMTRを同期させる方法あります
MIDI端子のないMTRに入れたオケとMIDI端子のついたgroove boxを同期することをずっと考えていて、調べに調べ、試行錯誤の末にようやく同期する方法にたどり着きました。
正直、この方法は需要がないとは思いますが、自分と同じようにもしライブ等で上記の方法をしたいけど、やり方がわからない方がいたらと思い、情報を共有します。
この記事の最大のポイントは
"MIDI端子のないMTRとMIDI端子のある機材の同期"
です。
2024年2月現在、いくつかのメーカーからMTRの製品が発売されていますが、ほとんどの製品にMIDI端子が付いていません。(たぶん)(逆に昔はMIDIが付いていない方が珍しかった)
ライブでMTRに入れたオケとMIDI機材を同期したパフォーマンスをしたい強い気持ちがありこの方法にたどり着きました。
またこの方法は非常に汎用的ですので、似たような機材でも実現可能な所も重要なポイントです。
*現行品ではない昔のMIDI端子付きMTRを使用すれば問題はすぐに解決しますが、現行のMTRの方が音質や機能が優れていることが多いため、現行製品を使うことが自分にとって最低条件でした。
【目的】
zoomのMTRの現行製品R8に入れた音源(クロックに同期して制作したオケ)とElektron Model:CyclesをArturia KeyStepを経由して同期させます。
MTRを再生するとオケが鳴り、Model:Cyclesのシーケンサーが同期して再生、MTRの停止を押すとModel:Cyclesも停止します。プラスアルファとしてKeystepの鍵盤でModel:Cyclesの音色を演奏できます。
MTRを再生した後、Model:Cyclesのシーケンサーが走り、Model:Cyclesのトラック2のSDが鳴り始めます。途中からModel:Cyclesのトラック1のkickとトラック2のSDをリアルタイムで打ち込んでいます。さらにModel:Cyclesのトラック4の音色をkeystepの鍵盤で演奏しました。
【本記事で使用する機材】
(下記の機材以外でも似たような仕様であればそれで試してみて下さい)
(補足)
汎用的なミキサーはR8とMCの音をスピーカーもしくはヘッドフォンからモニターするための用途です。
もしR8を使う場合はUSBでPCに接続して給電すればカードリーダー機能を使えるので作業効率が上がります。
keystepの代わりにYAMAHA YMC10やSONICWAREのsyncとMIDI端子が付いた機材などでも実現可能と思います。
【手順① keystepの設定】
https://www.arturia.com/support/downloads&manuals
Arturiaの公式サイトからMIDI Control Centerをダウンロードし、PCにインストール。keystepをPCに接続して上記画像のように設定する。多分デフォルトが上記設定になっていると思います。(本記事では各設定の細かな説明は割愛します)
【手順② MCの設定、接続】
R8に入れた同期元のオケのBPMが120のためMCで打ち込んだリズムのBPMも120に設定。
MCのMIDI syncを下記に設定
Clk In ON
Clk out ON
MCのMIDI OUTとkeystepのMIDI INをMIDIケーブルで接続
keystep背面のディップスイッチ(以下、dip sw表記)をMIDIに設定(白色のスイッチを両方上にする)
keystepのSYNC OUTからMTR R8のInput ch1へ接続
【手順③ sync音の録音】
MCのシーケンサーを再生するとsync音がMTR R8のInput ch1に入力されることを確認。
R8のトラック8をMIC LINEに設定しGAINの調整をし録音の設定をする。
(クリップしないぎりぎりまでGAINを上げる)
(MCからのMIDIクロック信号がkeystepを経由することでsync信号に変換され、その信号をR8に録音する)
MCの再生を一旦止めシーケンサーを最初の小節に戻す。(停止ボタンを一度押せばOK)
R8の録音を開始後にMCのシーケンサーの再生を開始。
R8に入っているオケの長さよりも少し長くsync信号を録音する。
【手順④ 同期の確認とMCの録音】
ケーブルの接続を変更する。
keystep背面のdip swをSync Inに設定(白色のスイッチの左を上、右を下)
keystepのMIDI OUTからMCのMIDI INにMIDIケーブルを接続
R8のPHONES(ヘッドフォン端子)からkeystepのSYNC Inへモノラルケーブルを接続
R8のPHONESのボリュームはMAXにする。
(音量が小さいと信号が不安定になり同期がずれます)
R8のメトロノームを下記に設定
TOOLボタンを押下
METRONOME
ON/OFF → Play&Rec
LEVEL → 100
PAN → Center
SOUND → Track8(先ほどSync信号を録音したトラック)
PRE COUNT → OFF
R8のMETRONOMEのスイッチをPHONES ONLYにし、CLICKの方へエンコーダーを回し切る。
(ヘッドフォン端子からはクリックの音しか鳴らないようにするため)
MCのLch outputからR8 ch1 inputへ
(ここの接続はステレオでもOK)
R8の再生をしsync信号が流れたらMCが同期して再生するのを確認する。R8のMETRONOMEのスイッチをoutput+PHONESにするとsync音も聞こえます。
R8のGAINを調整してMCの録音レベルを適切に設定。
R8を停止し小節を最初に戻す。MCも停止ボタンを押下しシーケンスの開始を最初に戻す。(R8の停止ボタンを押下後、MCも自動で停止します)
R8を再生し、MCの音をトラック7へ録音。
(録音は1小節くらいでOK)
【手順⑤ オケの開始位置の変更】
R8のSDカード内にある下記ファイルをDAWの新規プロジェクト内の先頭に合わせて貼り付ける。
R8で録音したSyncファイル
MCの1小節程度のファイル
オケ
念のためBPMはオケと同じに合わす。
=========
(補足)
SyncファイルとMCのファイルは同期しているが、Sync音の頭でMCのシーケンスが開始するわけではない
=========
MCの音が鳴る開始位置にオケのファイルの先頭を合わす。
(波形を拡大してぴったりと合わす)
この時、オケのファイルの長さは絶対に変えない。もしオケの先頭に無音部分があったとしても、それを含むファイルの先頭をMCの開始位置に合わせる。
sync音のファイルの先頭からオケの最後までの範囲を選択し、オケだけを書き出す。
【手順⑥ オケとMCの同期の確認】
上記画像のように接続を変更する。
書き出したオケのファイルを先ほどSync音を録音したR8のプロジェクト内に移してトラック1,2に貼り付け
(モノラルの場合はトラック1)
トラック7に録音した1小節くらいのMCのトラックは消す。
(オケとの開始点を合わせるためだけに使用したため)
R8の再生を開始するとオケに同期してMCが再生される。
オケが終了し、sync音が鳴り終わるまでMCは同期再生されます。
以上
【補足】
同期終了位置はsync音のファイルの長さで調整する
sync音は途中で延長はできない。ファイルのコピペで延長は不可。延長したい場合は始めからsync音をその長さで録音し直す。
keystepで鍵盤を演奏するとMCの音が鳴る。keystepでMIDI CHを変更するとMCのトラックに設定した音色で演奏可能。
MCのパターンを変更する時は小節がずれる可能性があるので慎重に行う。
【最後に】
手持ちのMTRに入れたオケとMCなどのマシンを同期できたら表現の可能性が夢みたいに広がるなあとずっと思っていて、色々と調べる中、いくつかの動画を見つけました。
SONICWAREのENDOさんの動画を見た時は驚きとともに非常に勉強になりました。動画でご教授いただいて本当にありがとうございます。
Dane Cotarさんの動画を見つけた時はzoom R8で外部機器を同期できるなんてまさかと思ったり。
Phil Tippingさんの動画で自分のやりたいことができるかもと本気で思うようになりました。
sync音での同期はなんとなく理解した後で、自分が一番悩んだ所はR8に入れたオケを外部の機材とMIDI同期させることでした。
これがどうしても分かりませんでした。
(オケとの同期でなければ上記の動画で解決していました)
sync信号というものがよく分かっていないこともあって、とにかく調べ試行錯誤を繰り返しました。
その過程で80年代にカセットのマルチトラックレコーダーとMIDIがついたドラムマシンなどを同期させる方法でYAMAHA YMC10等(シンクロナイザー)を使っていたことを知りました。
YMC10でsync信号をMTRの空きトラックに録音し、そのsync信号を再びYMC10に送りMIDI変換しドラムマシンに送信することでMTRと外部機材を同期させていたと。
失敗の連続、色々とやり尽くして諦めかけた時、大きな勘違いをしていたことに気がつきました。
それは
「MTR R8の内部クロックとsync信号を合わせるのではなく、R8のクロックはまったく無視した状態でsync信号をマスターにして外部の機材を同期させる」
ということです。
試行錯誤の末に焦燥し、機材の性能を疑い始めた精神の末期状態でこの答えにたどり着いた時のうれしさたるや言い表せないほどです。
音楽の神様からヒントをもらえたように思いました。
今から何十年も前に使われていた同期の手法を今の機材に応用するのはかなり不思議な感じですが、その技術を開発してくれたことに、感謝の気持ちしかありません。