ヘルステック企業の経営戦略分析
# No1.タニタ
主な事業方針
タニタではこれまで、「はかる」を通して世界の人々の健康づくりに貢献していくことを理念に、「健康をはかる」計測機器の開発・販売に取り組んで来ました。
やはり、一丁目一番地は健康関連のハードウェア計測機器の開発・販売
2014年には企業や自治体向けの集団健康づくりパッケージ「タニタ健康プログラム」の提供を開始するなど、「健康をつくる」サービスへと事業を拡大しています。
徐々に、ハードウェアからそれ以外に人に対して健康を提供するアクションも広がっている。ただし、それはハードウェアとの親和性の高さが伺える。
ソフトウェアへの注力は、ハードウェアのデータ閲覧用のアプリなどはだしているがあくまで自社主力製品のハードウェア事業成長のための取り組みであり、ソフトウェア自体を単独の事業成長目指して取り組む様子はHP上はあまり見受けられない。
ヘルステック系の子会社でも取り組み中
ヘルステック系の子会社があり、そちらの方で主に注力している。
「AIを活用した生活習慣改善サポートシステム ミライフ・健康シフトプラン」を提供
定期検診データと自社ハードウェア機器での日々の計測データを用いたトラッキングと、達成したい活動別に準備されたミッションの提示とその実施状況のトラッキングを提供
![](https://assets.st-note.com/img/1729052068-UJwYK5QRk9MCDFhLtiIsb10q.png?width=1200)
実際に、中高年のビジネスパーソンにおいて、このサービスの毎日の利用で健康状況が改善することがデータとして示されている。
比較的健康な中高年のビジネスパーソンを対象として多くの方に適応できると考えられた。「健康シ フトプラン」を活用することで、個人の健康意識を高め、健康への行動変容が起こった参加者にお いては、BMI や腹囲、LDL コレステロール等を前後比較をすると改善がみられた。今後、若年層、 高齢者層、病気のある方の利用において、肥満の改善や生活習慣病等の予防効果の検証が進むこと を期待する。
# No2.オムロン
続いては、オムロン
※発表されている統合レポート2024から
https://www.omron.com/jp/ja/integrated_report/pdf_2024_jp.html
SF2030:2030年に向けた長期ビション
オムロンは2030年に向けた長期ビジョンを策定しており、中期経営計画もそこからブレイクダウンして考えられています。
私たちオムロンは、多くの社会的課題が噴出するこれからの10年を、新たな市場と事業を創造する大きなチャンスと捉えました。SF2030では、このチャンスを確実に捉えるために優先する社会の変化因子を、「高齢化」「気候変動」「個人の経済格差の拡大」の3つに絞りました。この3つの変化因子から、オムロンが捉えるべき社会的課題を3つ設定しました。具体的には、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」です。この3つの課題は、社会に与えるインパクトが大きく、そして、オムロンの強みであるオートメーション、そして顧客資産や事業資産を活かす観点から設定しました。
SF2030 トピックス:健康寿命の延伸
https://www.omron.com/jp/ja/edge-link/news/713.html
オムロンがSF2030で目指す「健康寿命の延伸」では、人々が健康であり続けることで自分らしさを追求できる社会づくりへの貢献を目指しています。
ヘルスケア事業を担うオムロン ヘルスケアでは「Going for ZERO ―予防医療で世界を健康に―」をビジョンに掲げ、循環器疾患、呼吸器疾患、慢性痛の領域を中心に、健康寿命の延伸に向けた取り組みを進めています。
オムロンでも予防医療に注力していますが、その中でも既存のハードウェアとの親和性が高い部分に対しての取り組みを進めている様子です。
ヘルスケア事業
グローバルで慢性疾患患者数の増加傾向が継続する中、血圧計等の健康機器の需要は増加すると見ています。このような中、グローバルで拡大するオンラインチャネルでの販売強化に加え、新興国における需要拡大を捉えてまいります。特に、日本、欧米、中国での家庭心電計の販売拡大や、各エリアの現地ニーズを捉えた商品展開の強化により、24年度の売上高は1,610億円で増加を見込みます。
制御機器事業の再成長に向けて
もう1つは、「商品・技術戦略」、すなわち基幹商品の競争力強化です。オムロンは、コントローラやセンサー、セーフティ機器など、コンポーネントを中心とする幅広い領域の制御機器を揃えていることを大きな強みとしてきました。しかし、デジタル化社会の高度化が進み、消費者が高性能な最終製品を求め続ける中、私たちの顧客である製造業のお客様のモノづくり現場においては、その製造プロセスにおけるより一層の高度化が求められるようになってきています。その一方で、顧客のモノづくり現場では製造に関わる人手不足に直面しています。このようなモノづくり現場の課題を解決することがオムロンの使命です。
タニタは体重計が中心だったのに対し、オムロンは血圧計などの健康危機の需要増加を見込んでいる。
ただ、兎にも角にも、やはり慢性疾患患者が増える今の世の中に対して、に自社の強みであるハードウェアを中心とした戦略でヘルスケアに関する社会課題の改善を図る方針が見える。
また、徐々にデジタル化社会の高度化が進むのに対して、より一層高度な制御機器事業・ハードウェア商材での進歩を目指している
HCB(ヘルスケア事業)では、世界シェアNo.1を誇る家庭用の血圧計や心電計が主力です。しかし、社会的課題が深刻化・複雑化する中で、製品だけで解決できることは限られています。このような観点から、あらゆる現場のデバイスから得られるデータをソリューションに変えるビジネス、すなわち「モノ+サービス」事業への転換を加速させようとしているのです。
また、それらのハードウェアを中心としながらも、そこから得られるデータを元にしたビジネス展開の加速も狙っています。
ヘルスケア事業における血圧計や携帯型心電計などは、今後も市場成長が見込めます。
そして、アロケーションなどでの話の中では、引き続き、ヘルスケア事業の主力商材である血圧計・心電計の市場成長の予測に伴い、注力していくようです。
ヘルスケア事業(HCB)について
事業の強み
血圧計の普及を通じて築いた医療従事者や患者、消費者からの信頼が、私たちの強みの1つです。これは新たな取り組みである「家庭での心電図記録文化の創造」にも活かされています。
また、私たちは医療機器として必要な安全性と精度基準をクリアし、130以上の国と地域で血圧計を販売しています。一方でデバイスの普及に向けた規制緩和にもチャレンジしています。日本では今まで一般消費者向けに心電計の製品情報を提供できませんでした。今回、許認可取得活動を通じて構築した行政等との関係性を活かし「発作時心臓活動記録装置・発作時心臓活動記録装置用プログラムの適正広告・表示ガイドライン」の発行に携わりました。これにより、心電計付き上腕式血圧計や携帯型心電計の情報をダイレクトに消費者に提供できるようになりました。
「SF2030」実現に向けた成長戦略
基盤となるデバイス事業では、顧客が必要な時に最適な場所で 製 品 を 購 入 で き る よ う 、オ フ ラ イ ン、オ ン ラ イ ン そ れ ぞ れ で 更なる販路強化に取り組みます。新規事業では、心電計の普及に注力。欧州では1500人以上の心臓専門医を訪問、年間約1600軒の売り場を開拓しました。
デジタルヘルス領域では、現在世界130以上の国や地域で配信されている健康管理サービス「OMRON connect」を強化していきます。日本ではJMDC社の健康保険組合向け生活習慣改善ソリューションサービスとオムロンコネクトのデータ連携を開始しました。
オムロンコネクトとは他のアプリともデータ連携を協力している様子。ただし、主な提携企業にFiNCさんの名前が出ていなく、一応データ管理だけだと似た分野だから牽制し合ってるのかな?
他に企業は栄養管理、生理管理とか、オムロンが全く手掛けていない領域のアプリたち
JMDC社との協業
目線が合うという意味では、ヘルスケアのビジョンが同じところを見据えているのが大きいですね。オムロン ヘルスケアは半世紀続けてきた血圧計事業で、グローバルで50%以上のシェアを持つに至ったわけですが、循環器の重症疾患ゼロ(ゼロイベント)を実現するためには、いかに患者の行動変容を促すかということが課題でした。そこで行き着いたのがデータです。多種多様なヘルスケアのデータを大量に集積し、重症化を防ぐために活用していたJMDCに出会い、ゼロイベントのビジョンを実現する最強最良のパートナーとして、一緒になりたいという思いに至ったのです。
主に、健保などのデータをもとに、見える化したり、それに合わせた健康増進プログラムなどを提供している企業様の様子。toCというよりはBtoBtoEをメインにしていて、きちんと正しいデータ・健康情報の可視化と正しい情報提供
オムロンの価値創造モデル
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元々の2022-2024中期経営計画「SF 1st Stage」はこちら
1st Stageの全社方針は、「トランスフォーメーション の加速による価値創造への挑戦」です。2022年度から の3年間は、社会・産業構造の変化とともに成長機会あ ふれる期間であり、力強い成長、そして成長の持続性を 高めるために3つのグループ戦略に取り組みます。
1つ目は、「事業のトランスフォーメーション」です。より 複雑化・高度化する顧客課題の解決を果たし、持続的な 成長力を獲得するために3つの取り組みを進めます。具 体的には、4コア事業の進化、顧客資産型サービス事業 の拡大、社会的課題起点での新規事業の創出に取り組 みます。
2つ目は、「企業運営・組織能力のトランスフォーメー ション」です。事業環境の変化に適応しながら、価値創造 をし続けるための企業運営・組織能力の転換に向け、「ダ イバーシティ&インクルージョンの加速」「DXによるデー タドリブンの企業運営」「サプライチェーンのレジリエン ス向上」を進めます。
3つ目は、「サステナビリティへの取り組み強化」です。 脱炭素・環境負荷低減に向けたGHG排出量の削減、 グローバルでの人権尊重の徹底に取り組みます。
#No.3 テルモ
2021年に中期経営戦略が発表されていたので、こちらを見ていきます
テルモ、5カ年成長戦略「GS26」を策定 ― 「デバイスからソリューションへ」 21世紀の社会課題に応える ―
https://www.terumo.co.jp/sites/g/files/qlpvch151/files/migrate_data/pressrelease/data/2021/1216/20211216_J_1.pdf
GS26は、創立100年の節目に、次の10年超を見据えた5カ年成長戦略です。ヘルスケア業 界は、高齢化社会による慢性疾患との共生や、ゲノム医療とAIの進化による個別化医療の本 格普及など、構造が急速に変革しています。既存事業の深化と将来への確かな投資を行い、加 速する医療のパラダイムシフトに応えてまいります。
ソリューション化のフォーカス ― 3つのD
◼ Delivery:高度な疾患治療における高付加価値な生体アクセス・デリバリー
血管内治療では、これまで到達が困難だった部位・症例にも対象を拡充することや、 血管に限らない新たな治療ルートの開拓を進めます。それにより、患者さんへの負担 を減らす低侵襲医療の世界的普及を目指します。
◼ Digital:患者さんの長期的な QOL 向上を目指す疾患アプローチ
デジタル技術を駆使しながら、手術前後・病院内外など様々な場面をつなぐ統合 型のソリューションを提案します。心不全や糖尿病などの慢性疾患を抱える患者さん に寄り添い、治療継続・完遂の向上を目指します。
◼ DeviceuticalsTM:革新的デバイスによる薬剤治療効果の最大化
医薬品と医療機器を融合させたコンビネーション製品によって、薬剤の投与量・タイ ミング・有効性などの最適化を実現させます。薬剤デリバリー技術のイノベーションで、 コンビネーション製品の提供と進化の加速を目指します。
テルモさんは、心臓血管分野、血液管理、病院ソリューション、医薬品製造など多岐にわたる製品を提供しています。
特にカテーテルや人工心肺装置、透析装置など、高度な医療機器分野で世界的な競争力を持っており、中期経営計画で主な方針に挙げている3点も、これらの強みを活かしてそこから繋がるソリューション部分への拡大が伺えます。
ライフケアソリューション事業
ライフケアソリューション事業は、糖尿病をはじめとした慢性疾患を抱えながら生活している一人ひとりの患者さんにとって、個別に最適化された医療を実現するソリューションを提供しています。
健康を願うすべての人に寄り添った新たな価値創出を通じて、「患者さんの予後改善」「重症化予防」そして「QOL の向上」に貢献します。
テルモは、使いやすい血糖自己測定器や、患者さんの痛みや注射への恐怖心の軽減を目指した注射針の開発に取り組んできました。近年は、治療にともなう、患者さんのこころとからだのストレス軽減を目指し、患者さんの動きやすさに配慮したインスリンポンプや、リアルタイムでグルコース濃度の変動を確認できる持続血糖測定器を展開しています。
バイタルサイン管理関連製品
医療現場では、患者さんの診断や治療に役立てるために、毎日の体温や血圧、血糖値、血中酸素濃度といったバイタルサインを管理しています。数多くの入院患者さんを抱える病棟で、看護師が一人ひとりの患者さんのベッドサイドを回りながら、バイタルサインの測定を行い、ナースステーションに戻って測定値の転記作業を行っています。
テルモは、血糖自己測定器、血圧計、体温計などにNFC通信機能を搭載し、測定後、NFCリーダー/ライターにタッチするだけで電子カルテに反映できる測定機器シリーズを展開しています。入力ミスや転記ミスがなくなるだけではなく、医療スタッフ間でのバイタルサインの共有を、よりタイムリー・正確に行えるようになります。このように効率化した時間を患者さんのケアの充実に活かすことで、医療の質の向上に貢献していきます。