18-2.特定口座で源泉徴収ありの人へ:損切りをしたら確定申告していますか?
投資を始めたばかりの人や、特定口座(源泉徴収あり)を利用している人の中には、「確定申告は不要」と思っている方も多いかもしれません。しかし、損切りをした場合、確定申告をすることで節税のチャンスがあることをご存じでしょうか?この記事では、損切り後に確定申告を行うべき理由と、その手続きについて詳しく解説します。
1. 特定口座(源泉徴収あり)の仕組み
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が売却益(譲渡益)や配当金に対する税金(20.315%)を自動で計算・納税してくれるため、基本的には確定申告を行う必要がありません。しかし、損失が発生した場合は状況が異なります。
損失が発生した場合の重要ポイント
源泉徴収された税金を取り戻せる可能性がある。
損益通算を行い、利益と損失を相殺できる。
損失が余った場合は、翌年以降に繰り越して控除することも可能(損失繰越控除)。
2. 損切り後に確定申告をするべき理由
(1) 損益通算で節税ができる
同じ年内に発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らせます。
例:
2023年の前半に株式売却で50万円の損失を確定。
後半に株式売却で100万円の利益が発生。
確定申告をしない場合、100万円に対する税金(約20万円)がそのまま徴収されます。
確定申告を行えば、利益100万円-損失50万円=課税対象50万円となり、税額が半減します。
(2) 損失繰越控除で翌年以降の利益を軽減
確定申告を行うことで、損失が翌年以降3年間繰り越され、将来の利益と相殺できます。
例:
2023年に20万円の損失を確定。
2024年に30万円の利益が発生。
確定申告を行うと、2024年の課税対象は30万円-20万円=10万円となります。
(3) 確定申告しない場合の損
損失が相殺されず、源泉徴収された税金が返ってこない。
翌年以降の利益に対して損失を繰り越せないため、節税の機会を逃す。
3. 確定申告の手順
(1) 必要な書類
証券会社から発行される「年間取引報告書」。
取引内容や損益が記載されています。
本人確認書類(マイナンバーカードなど)。
(2) 確定申告の流れ
年間損益の確認:
年間取引報告書をもとに、利益と損失を確認。
確定申告書を作成:
税務署の窓口やe-Taxを利用して申告書を作成。
損益通算や損失繰越を申告:
利益と損失を相殺し、必要な控除を適用。
提出・還付金を受け取る:
税務署に申告を行い、還付金を受け取る。
4. どんな人が確定申告をすべきか?
確定申告が必要な人
同じ年内に利益と損失が両方発生している人。
大きな損失を確定させた人(損失繰越控除を活用したい)。
配当金を受け取り、損益通算で相殺したい人。
確定申告が不要な人
その年に取引がなく損益が発生していない場合。
利益が小額で、特に源泉徴収された税金を気にしない場合。
5. 知らないと損する事例
事例1:損切り後に確定申告をしなかったAさん
年間で30万円の損失が発生。しかし、特定口座(源泉徴収あり)だったため、「確定申告不要」と思い込んで申告せず。
翌年に50万円の利益が発生し、全額に対して税金が課された。
本来、30万円を繰り越していれば節税できたはず。
事例2:配当金を相殺し忘れたBさん
株式の損失20万円が発生。同時に配当金で10万円の収入があったが、申告しなかったため、配当金にかかる税金2万円がそのまま徴収。
損益通算をすれば配当金と損失が相殺でき、税金を節約できたはず。
6. 確定申告を忘れないためのアドバイス
年間取引報告書を必ず確認:
証券会社から毎年送られる年間取引報告書を確認し、損益状況を把握。
損失が発生したら確定申告を検討:
特に翌年以降の利益が見込まれる場合は、損失繰越控除を忘れずに。
税務署や専門家に相談:
初めての確定申告で不安な場合は、税務署や税理士に相談する。
まとめ:損切りをしたら確定申告で節税のチャンスを活かそう
特定口座(源泉徴収あり)は便利ですが、損切りをした場合、確定申告をしないと節税のチャンスを逃してしまうことがあります。特に損益通算や損失繰越控除を活用することで、翌年以降の税負担を軽減できます。損切り後の税務処理を正しく理解し、確定申告を行うことで、投資の効率を最大限に高めましょう。