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二色の独楽/井上陽水(1974)


二色の独楽のイラスト🕶️

 陽水さんのアルバムを手にしたとき、必ず思い出すことがあります。僕は、実家は大阪でしたが、就職した会社(大阪本社)の最初の赴任地が、関門海峡を渡った九州の玄関口の小倉の営業所でした。そこの最初の上司は、ちょっとやんちゃな人が多い(と言われる)筑豊の田川出身で、その上司もパンチパーマで一見やばそうな人でしたが、人間的には懐も深く、すごくいい人でした。学生気分の僕に社会の厳しさ?のかけらを教えてくれた人です。その人が、「いのうえあきみは、俺の高校の同級生たい!おとなしいやつやったけどな」???と言うのですが、よく聞いてみると、「いのうえあきみ」は本名で、井上陽水さんの事でした。やっぱり同郷のヒーローを自慢したかったのでしょう。

その上司は、僕が最初のボーナス支給日に、「おい、すぐ返すから5万円貸しとけ、どうせ一人でなんもつかわんやろ?」と優越的な地位を使い迫ってきました。僕もパンチパーマを見たら「ハイ」と言って返すしかなく、「すぐ返してくださいね!」と言いました。「あたりまえたい!」と返事は良かったのですが、返ってきたのはこちらから催促して6か月後でした。多分競馬ですってしまったと思います。まあ、笑い話のような話ですが当時はそんなたぐいの話はどこでもあったでしょう。今だったらとんでもない事になるでしょう。でも、初めての良い社会勉強となりました。確かに、そんなパンチの上司からしたら、「いのうえあきみ」さんじゃなくても、みんなおとなしくて当たり前だと思います。
今もあの頃の調子で元気にされているのかなとアルバムを聴くたびに懐かしく思います。

つい、つまらない話をしてしまいましたが、

これは陽水さんの4番目のアルバムです。どうしてもブルーのジャケットを部屋に飾りたくて棚から引っ張り出してきました。陽水さんのアルバムジャケットの中では、一番のお気に入りです。幽霊のように魂だけが抜けていくように描かれた二人の陽水さん。幽霊陽水さんは、髭を剃ってる謎のジャケットです。実はこの裏面は、ジーンズ姿の下半身の写真で、本物陽水さんはなぜか右手にはラジオペンチを持っています。さらに横にはFender(?)のテレキャスターが足元に立てかけられています。空前の大ヒットを飛ばした「氷の世界」のジャケットではまだアコギを抱えていましたが、この作品はフォークからロック(あるいはニューミュージック)を意識したコンセプトが匂ってきます。
さらにこの青いジャケットは実はぺろって剝がすと、縦長の全身ポスターになってもう一つジャケットが出てきます。


青いジャケを剥がすと出てくるもう一枚のジャケ

よく見ると髭の陽水さんです。そして僕が気になって仕方がなかったのが、左側のコマのようにグルグル回るギターです。こちらはアコギでも、ソリッドタイプのエレキでもない、その中間のセミアコースティックのギターです。彼の当時やりたい音の方向性をどうしても感じてしまいます。ディランがフォークからロックへ移っていった事と、それによってフォークファンから大ブーイング
が巻き起こる大事件になった事を意識しているように変にかんぐってしまう内容です。

前作が日本レコード市場初のミリオンセラーというお化けみたいな作品でしたので、それとの比較では、少し影が薄い印象ですが、全体通してのサウンドは素晴らしく、また当時も口ずさんで聞き覚えのある曲もたくさんあります。特にこの曲は良く口ずさんだ曲です。(ちょっと音が出るまで間があります)

ロンロンロンロンロンドン急~行~♪♪♪大学の授業が休講(急行)になったとき、嬉しさのあまりにこの歌を歌ったのは僕だけでしょうか?(麻雀で上がった時も歌ったおなじみの曲です)そんな嬉しい気分を後押ししてくれるこの曲の軽快でポップなリズムに加えて、歌詞にも陽水さんのビートルズ愛をとても感じます。
「氷の世界」はロンドン録音を取り入れていましたが、こちらはLA 録音で、ジェシ・エド・デイビスやデビッド・T・ウオーカーやレイパーカーJRなど蒼々たるメンバーをバックに録音されているようです。「フォークの帝王」なんて呼ばれていましたが、「氷の世界」でも海外の有名ミュージシャンや細野晴臣さん、林立夫さん、高中正義さんといった国内屈指のメンバーを従えて当時のニューミュージック萌芽期を牽引した音作りだったと感じてしまいます。

これなんかはもう十分ロックな音です。



この曲「夕立」のドラムを中心とした独特のリズムと、陽水さんの「ウッ、ウッ、ウッ♪」や「ワーフ、ワーフ、ワーフ♪」と言った言葉とリズムとバックコーラスの「フッフー~!」が絡み合い、どこかストーンズの「悪魔を憐れむ歌」を連想させます。

ところで当時から、陽水さんは、盗作癖(笑)があったようで、タモリさんとのテレビ番組で自身の盗作?を暴露しています。(笑)「銀座へはとバスが走る~♪」という歌はビートルズの「Till there was you」から、また、「いっそセレナーデ」は、JAZZのスタンダード「枯れ葉」からパクったような話をおもしろおかしく、アコギ片手の生歌で披露しています。もちろん、彼特有のユーモアですが、僕は昔から陽水さんのゆったりした高いすごく通る声で話すセンスの良いユーモアがとても好きです。特に同郷(福岡)の朋友タモリさんとの掛け合いは、面白すぎるので共有します。(3分30秒くらいから掛け合いがはじまります)


話がアルバムから離れてしまいましたが、B面のラストの2曲、特に「眠りにさそわれて」が今はお気に入りです。そしてラストの「太陽の町」が流れてくるのですから、それはもう極上の気分です。ぐっすり眠りたい夜には特にお勧めです。

陽水さんは今どうされているのでしょうか?気になります。

おやすみなさい💤


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