足音
いつだったかよく覚えていない
祖父が亡くなってから1年後くらいだったろうか
その頃、私達の子供部屋は階段を上がってすぐ左手にあって
私は妹と2段ベッドで寝ていた
入り口は上半分が曇り硝子の昔ながらの開き戸だった
ある夜
もうベッドで眠りに落ちていた遅い時間
「ギシッ…ギシッ…」と
誰かが階段を上ってくる足音が聞こえてふと目が覚めた
両親の部屋は2階の廊下を挟んだ向かい側にあり
もう2人とも寝ているようだった
下には祖母の部屋があったので
私は祖母が何か用事でもあるのかとうつらうつらしながらそう思っていた
階段を上った足音はそのまま静かに廊下を進み
私達の部屋の開き戸の前でピタリと止まった
(なんだ、やっぱりおばあちゃんか
でもなんで入ってこないんだろう?)
そう思っていたが
「足音」はそのまま動かずにじっと開き戸の前にいたので
やがて私はそのまま、また眠りについてしまった。
次の日の朝
私は祖母に
「昨日、何の用だったの?夜、二階に来たでしょ?」と言うと
祖母は眉をひそめながら
「何言ってるの? 二階になんて行ってないわよ?」
と怪訝そうに答えた
そうか
じゃあきっと私が夢でも見てたのかな?と思っていると
妹がおずおずと私の顔を覗き込み
「お姉ちゃん、昨夜 誰か階段を上がってきたよね?」と私に言った。
耳に残っているその「足音」は今でも思い出すと肌がざわつく音だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?