59 それぞれの宴

「こっちは女子会やるから、男同士で親睦でも深め合ってこい」とハルキに言われ、フォルクハルトは、あまり乗り気ではなかったがカワト家で行われる飲み会に参加することになった。
メンバーはショウゴ、トミタロウにマツダが加わった四人だ。
始めはゲームや昆虫の話をしていたのだが(カブトムシとクワガタのどちらがカッコイイかという話には正直ついていけなかった。ハルキはミヤマクワガタが一番カッコイイと思っている事をマツダから聞けたが、それ以外に重要な情報はなかった。)、そのうちに、女性のどんな服装が好きかという話になったので、フォルクハルトは呆れて話半分でクラッカーにクリームチーズを乗せて食べていた。マツダが持ってきたワインとよく合う。
「ミドリちゃんは、やっぱり白衣かなあ」
「いつも通りじゃないですか」
ショウゴの意見にトミタロウがつまらなそうに返す。
「いやいや、家では着ないから」
笑って言ったショウゴに「着てもらったらいいじゃないですか」とトミタロウが言い返すと「ミドリちゃん、そういうの嫌がるから」と彼は苦笑した。
「ミュラーはハルキにどんな格好して欲しいんだ?」
マツダに話を振られて、フォルクハルトはうんざりした表情を浮かべた。
「服なんか本人が着たい物を着てればいいだろ」
「夢のない事言いやがって…メイド?ナース?年齢的にちょっとあれだがセーラー服とか?」
「普通にワンピースとかドレスもいいんじゃない?ハルキちゃん普段着ないし。」
ショウゴも話に入ってくる。
「着てる物に興味がない」
話を終わらせようと冷たくあしらうと、マツダはポカンとした後、目を眇めた。
「全裸か。エロ大魔神め。」
トミタロウは口元を手で覆い「うわあ」と言って、フォルクハルトに軽蔑の眼差しを送った。
「そういう意味じゃない!ハルキはハルキが好きな物を着ていてくれればいいんだ!」
「浴衣は?うなじのところとか、結構グッとくるよ」
「チャイナはどうだ?ミニスカチャイナ!」
ショウゴとマツダがこちらの話も聞かずに次々と勧めてくる。
「だから…」
「皆さん何もわかってませんね。」
フォルクハルトが言いかけた時に、トミタロウが思わせぶりに口を開いた。
何やら自前のタブレット端末を操作している。
「フォルトさんは…こっちですよ」
スッと机の上に置かれたタブレット端末に表示されていたのはSM女王ボンテージだった。
フォルクハルトは目を瞬いた。
トミタロウは一体何を言っているのだろうか。俺がハルキにこれを着て欲しいと思っているとでも言うのか。似合うかもしれないという気はしなくもないが、何故突然こんなものが出てきたのか。むしろトミタロウの趣味なのではないか。
「マジか!そっちか!!あーそうか…従順…だもんな…」
黙ったのを肯定と受け取ったのか、マツダは一人納得してうんうんと頷く。
「ち、違う!変な納得の仕方をするな!!」
「え?違うんですか?」
トミタロウはキョトンとしていた。つまり、揶揄おうとしてやったわけではないという事だ。
「トミー!お前、俺の何を見てそう思った?!」
トミタロウに詰め寄るが、彼は「いや、まあ、何となく」などと曖昧な返事をしただけだった。
「そっちかあ…まあ、でもちょっとわかる。ピンヒールで踏まれてみたい、みたいな…」
「ショウゴさん、そっちなんですか?!」
「それ、パートナーに頼んだりすンのか?」
トミタロウとマツダの興味がショウゴに移る。
「しない!ミドリちゃん絶対ドン引きするもん。」
ショウゴはハハハと笑う。フォルクハルトは、とりあえずこちらへの興味は無くなったようだと安堵した。
「ハルキなら割とノリでやってくれるんじゃね?なあ、ミュラー」
が、マツダがUターンして戻ってきた。
「違うと言ってるのに俺に振るな!」
「はいはい、わかったわかった。お前は全裸な。」
「それも違うと…」
食い下がるフォルクハルトにマツダはわざとらしく大きなため息をついた。
「こういう時にいい子ぶるな。もっと、欲望を吐き出せ。」
「そういうマツダさんは?」
トミタロウの問いにマツダは即座に答えた。
「俺はやっぱり水着だな。白ビキニ。」
「お、健全なの持ってきましたね」
「おら、トミーも開示しろ」
「僕は深窓の令嬢、淡い色のワンピース。」
「清楚系かあー」
マツダは「それもいい」としきりに頷いている。
「ほらほら、ミュラーも出してこいよ」
「う…」
流れで答えざるを得ない状況に陥り、三人の期待した瞳に追い詰められる。何かしら答えなければ解放されそうにもない。
「…宿の浴衣は…良かった…」
目を伏せて何とか絞り出した答えに、マツダは「お、いいねー」と沸き立つ。
不意にフォルクハルトの端末から着信音が鳴り響いた。ハルキからの音声通話だ。
フォルクハルトが躊躇していると、三人は無言で出るように促した。
「ななな何だ?どうかしたか?」
余計な事を話していたせいで声が上ずる。
「あ、いや、うまくやってるかなって、思って。何慌ててるんだ?」
「何でもない!大丈夫だ!用がないなら切るぞ!」
「え」
即座に通話を切る。とにかく誤魔化して乗り切ったものの、変な汗が吹き出してくる。
「慌てすぎだろ。また、温泉行こう♡ぐらい言えよ」
「言えるか!」
「結婚してるんだから言えるでしょ」
マツダとトミタロウに呆れ顔で言われ、歯噛みする。
ショウゴが、やれやれとため息をついた。
「仕方ないね。またみんなで行こうか」
「嫌だ!行くなら二人で行く!」
フォルクハルトに睨みつけられて、ショウゴはきょとんとした後に片眉を上げてニヤリとした。
「ん?それは、みんなで行くとできない何かがしたいって事かな?」
フォルクハルトは気不味い顔になり口篭る。咄嗟に口に出してしまったが、完全に悪手だったと後悔する。
「なんですか?みんながいるとできない事って?」
トミーが無垢な顔で聞いてくる。ショウゴは、真剣な顔でうんうんと頷いていたが、口の端は緩んでいた。
「ごめんね。この前は部屋隣だったもんね。声が漏れたりしたらと思ったらできなかったよね。」
フォルクハルトは黙って余計な事を言うショウゴを睨んでいた。
トミタロウは合点がいったらしく「あー」と声を出してから鼻で笑った。
「ミュラーは割とこう…初心うぶというか…かわいいところあるよな」
マツダは朗らかな笑みを浮かべている。
「どう言う意味だ」
フォルクハルトは今度はマツダを睨みつけるが、マツダは朗らかな笑顔のままだった。
「中学生みたいで揶揄いがいがある」
「まあまあ、この歳まで人間関係希薄だったんだから仕方ないじゃないですか」
トミタロウが追い討ちをかける。
「お前らぁ…」
フォルクハルトが怒りの形相で二人を睨みつけるが、二人ともまったく気にした様子はなく、マツダはしれっと話題を変えた。
「こんな面白い会なのにカイバラさん来ないんだもんなあー」
「まあ、ちょっと年齢も上だしね。入りにくいかも。」
「そういえばポゥさんはどうしたんですか?」
トミタロウに聞かれて、マツダは手をパタパタと振った。
「誘ったけど断られた。まあ、あいつうるさいの嫌いだしな。ていうか、俺の事嫌いだしな。」
「うるさいのは俺も嫌いなんだが」
会話に横から入ってきたフォルクハルトを、マツダはケタケタと笑った。
「ハルキと結婚しといてそれはねぇだろ。あいつも俺と同じ系統だし大概うるさいぞ」
言われてフォルクハルトは首を傾げて考える。同じ系統なのは、そんな気もする。ハルキを思い出してみると「フォルクハルト!フォルクハルト!!」とやたら名前を呼んでくるのが思い浮かぶ。不快に感じたことがなかったので気づかなかったが、確かにうるさい。
「年齢といえば、トミー的にはローズはどうなンだ?」
フォルクハルトがそんな事を考えているうちにマツダがまた話題を変える。
「え、ハラですか?ないです。」
「即答かよ」
「ハラとしても僕はないと思いますよ。」
淡々と答えるトミタロウにマツダは少しつまらなそうに「そうなのか」と呟いた。
「むしろマツダさん的にはどうなんですか?」
「いや、年齢離れすぎてるだろ。うるせえオッサンとしか思われてねぇよ。こっちとしても一回り違うとさすがにそういう風には見れないし…俺は体型的にももっと背が高くてグラマーな方が好きだし」
「ふーん」
「でも、あれだよな。ミュラーは大変だな」
また話題が変わったらしく、突然話を振られてフォルクハルトは眉間に皺を寄せた。
「何がだ?」
「ハルキは女にモテるだろ?ハルキ泣かせたら、気の強い女に激ヅメされるじゃん。カワトとかローズとか」
マツダの言葉に、フォルクハルトはゆっくりと目を逸らせた。その様子からマツダが察する。
「あ、お前さては泣かせた事あるな?」
フォルクハルトは、絶対に目を合わせないように下を向いた。
「お前マジか…ハルキが泣くって相当だぞ。何やらかした」
フォルクハルトは黙っていたが、誰も言葉を発さずに彼の言葉を待ち続ける。しばらくしても誰も何も言わずに、フォルクハルトを見続けていたため、彼はとうとう観念して答えた。
「ちょっと、色々あって…別れようと言ったら泣かれた…」
マツダが驚愕に目を見開いて身を乗り出す。
「ミュラーの方から別れを切り出したのか?!」
フォルクハルトは静かに頷いた。
「お前が?」
「あの時は、まだそんなにハルキに依存してなかったから…」
フォルクハルトの物言いに引っかかるものがあり、マツダは怪訝な顔をした。
「…ていうか、そういえばお前らいつから付き合ってたんだ?」
マツダに問われて、フォルクハルトは首を傾げた。結婚したタイミングを付き合い始めとするべきなのか、恋愛感情を持った辺りを付き合い始めとするべきなのか。いまいちよくわからない。
「……トミー。どこからカウントしたらいいんだ?」
「マツダさんが知りたい情報の答えなら、交際期間0で結婚した。ですね。」
トミタロウはうんざりした顔で答えた。
「は?」
「ということらしい」
フォルクハルトが付け加えたが、マツダは暫し呆然とし、それからブルっと首を振って意識を取り戻した。
「待て待て。何を言っているのかサッパリわからんぞ」
「交際期間0で結婚しました」
淡々と繰り返すトミタロウを、マツダは眉間と鼻に皺を寄せて眺める。
「…………そんな事ある?」
「恋人同士になったのは結婚したあとです」
「え?ど?え?」
とどめを刺すが如きトミタロウの言葉にマツダは混乱していた。
「まず、この前扶養制度の改正があっただろ」
フォルクハルトが説明に加わる。
「うん?そうなの?え、それがなんか関係あンの?」
「うむ。それにより各種補助と組み合わせると婚姻する事によるメリットがデメリットを上回る状況になった訳だ」
「すまん。話が見えない」
ますます混乱するマツダをよそにフォルクハルトは説明を続ける。
「それで制度改正に合わせて結婚した」
「は?」
「ちなみに、これはハルキの方から提案してきた話だ」
「お、おう…」
「そのため、結婚した時点では俺はハルキに恋愛感情を持っていなかった」
「なんだ、そのクソみたいな話…いや、待て。」
マツダは急に真剣な面持ちになり顎に手を当てて考え込む。
「…………それは、ハルキの策にハマったって事じゃないのか?」
「後でわかったが、そういう事だ」
マツダは大口を開けて天井を仰いだ。
「マジか…カイバラさんが正解だったか…」
「カイバラさん、何か言ってたんですか?」
マツダは座り直すと、トミタロウを見た。
「いや、ミュラーは完全に脈なしだしあれは無理だろってみんなで話してたら、カイバラさんだけが「ヤマガミは、あれで策士だから、わからんぞ」て言ってた。」
「へえー、さすがハルキさんのOJTリーダーしてただけありますね。」
トミタロウが感心している横で、フォルクハルトが怪訝な顔になる。
「みんなで話してた?」
「ハルキはわかりやすくダイレクトアタック仕掛けてたから、だいたいみんな知ってたぞ」
マツダの返答に、ショウゴがケタケタと笑っている。
「…そうだったのか」
「あ、もしかして分かっててスルーしてたんじゃなくて、認識できてなかったのか?」
まさか自分だけが気付いていなかったとは思わなかったフォルクハルトは、自分の鈍感さを恥じた。だが、それを彼らの前で認めるのは癪だった。
「…何か変だなとは思っていた…」
マツダは顔を引くつかせた後、噴き出し、「面白すぎる」としばらく腹を抱えて笑っていた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

イタリア料理屋で、ピザとパスタをテーブルに並べ、ハルキ、ミドリ、ローズはハルキの端末を呆然と見ていた。
「なんか切られた」
先程フォルクハルトに音声通話をしたのだが、慌てた様子で通信切断されてしまったのだ。
「エロい話でもしてたんじゃない?」
ミドリが冷たい目でそう言った。
「そうかな…まあ、大丈夫って言ってたしいいか」
釈然としないが気にしない事にして、ハルキはピザを頬張った。
「それより、ローズちゃんの話よ。既婚者の話なんかしたって、たいして面白くもないんだから」
ミドリはパスタを取り分けながら、ローズに向き合う。
「そういわれてもぉ…いい男いないしぃ」
「トミーは?」
「ない」
「カイバラさんとかマツダも?」
「ないない!完全におじさんじゃん。」
「ポゥは?」
「あの人彼氏いるもん」
「大穴でヤマト」
「ゲスはお断り!」
ミドリとハルキで次々に名前を挙げるが、箸にも棒にもかからない。
「えー?どういう系がいいの?」
ミドリに問われて、ローズは「んー」と考え込んだ。
「知的でぇ、スマートにエスコートしてくれる人でぇ、でもユーモアもあってぇ…」
「うちの会社にはいないタイプだ。」
ハルキが言うとローズは「だよねぇ」と、ため息をついた。
「でもまあ、いい人いなきゃ別にパートナーとかいなくてもいいしぃ」
「まあな。別に無理につくる必要はないな」
「それはそう」
ローズの意見に二人も同意する。
少しの間、静かな時間が流れる。
「それよりも、ハルキさんの話が聞きたい!」
ローズが、その沈黙を破って身を乗り出した。
「えぇ?」
「ハルキさんの好きなモノとかぁ、趣味とかぁ」
ワクワクした様子のローズに、気圧されてハルキは困惑しながら考える。
「好きなもの…フォルクハルトとか」
「あの男の事はいいです」
真顔で即座に返されて、呆然とする。
ミドリはケタケタ笑っていた。
「なんで、ローズもフォルクハルトに冷たいんだ?」
「も?」
ローズが首を傾げる。
「ミドリも冷たいんだ。ミドリの方は理由を聞いたけど」
不貞腐れて口を尖らせるハルキに、ローズは眉間に皺を寄せ「うーん」と唸った。
「ハルキさんにこんな事言うの申し訳ないんですけど、あの男、なんかムカつくんですよねぇ」
ミドリが「ねー」と同意する。
「私が男だったら、ハルキの隣は私の席だったのに…」
「ああーミドリさんなら納得ですぅ」
二人が頷き合っている様子を、ハルキは苦笑いを浮かべて眺めていた。大事に想ってくれているということなのだろうが、正直もう少しフォルクハルトを受け入れて欲しいとも思う。
「…じゃあ、猫の話とかにするか」
ハルキが少ししょんぼりして言うと、ローズは俄かに表情を輝かせた。
「ハルキさんネコ派?ウチも!」
「実家で黒猫を飼ってるんだ。」
「写真とかあります?!」
嬉しそうなローズにハルキも顔を綻ばす。
「ひこまろって言って…これ」
端末の写真を見せる。
「かぁーわいいぃ!」
「こんな感じ」
カメラロールスライドさせて見せていく。
「これ、なんで怒ってるんです?」
「ああ、これはフォルクハルトに怒ってる。フォルクハルトは、なんかずっと警戒されてた。」
「ウケる」
「おもろ」
意図せずフォルクハルトの話になったが、二人が楽しんでいるようなのでハルキは少し嬉しくなった。
「猫にはいつも警戒されるらしい。ちょっと困った顔してて可愛かった…」
「ウケる」
「おもろ」
「あ、スーツじゃん!」
猫の後ろに見切れたフォルクハルトにローズが叫ぶ。
「結婚の挨拶に行った時のだから」
恥ずかしそうに言ったハルキにローズは顔を顰めた。
「え?結婚したのだいぶ前だよね?」
「うん…私が親に言うの忘れてて…結婚して1年経ってから行った…」
「笑っちゃうよねー。さすがにミュラーに同情したわ」
ミドリが思い出してケラケラと笑う。
「ハルキさんって、そういうとこあるんだ!かわいいー!」
テンションの上がりきったローズに、ハルキ少し困ったように笑った。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

「よし。じゃあ、次の会合までにミュラーはハルキを温泉に誘う事。」
マツダが勝手に決定事項を伝える。
「何故そんな事をお前らに決められなければならんのだ」
「まあ別に報告とかは要らないけど、たまにはミュラーくんから誘ってあげないと。ねぇ?」
心底不服そうなフォルクハルトをショウゴが宥める。
「…」
フォルクハルトは、確かにハルキも誘ってくれないと文句を言っていたなと思い出して少し気不味そうにする。
「部屋風呂ついてるとこですよ?」
真剣な顔でトミタロウが念を押す。
「…う…下心バレバレじゃないか…」
部屋風呂なんて、一緒に入る前提としか考えられない。
「結婚してンだから気にする事ないだろ。」
「そうですよ。今更ですよ。職場ではキスしたりハグしたりしてる癖に」
「マジか。職場でやるなよ」
マツダから真っ当な指摘を受けて、フォルクハルトは沈黙した。

ハルキが家に帰ると、フォルクハルトは不貞腐れてソファに横たわっていた。
「もう嫌だ。二度と行かない」
「何かあったのか?」
手を洗い、鞄を片付けてソファの隣に来てみたが、フォルクハルトはソファの背もたれに顔をつけたままだった。
「みんなで俺を揶揄いやがって…」
通話した時は大丈夫だと言っていたのに何があったのだろうかと、ハルキはフォルクハルトの顔を覗き込んだ。
「どんな事で揶揄われたんだ?」
「………………」
フォルクハルトは不貞腐れた顔のまま一瞬ハルキの方に視線を向けたが、黙って背もたれに視線を戻した。
「まあ、嫌なら無理に行けとは言わないが」
やや呆れた様子のハルキの声を聞きながら、そういえば温泉に誘えと言われた事を思い出す。
「ハルキ…あの…」
「なんだ?」
聞き返され、どう言えばいいのか思案するが、何も思い浮かばない。それに唐突すぎる。
「いや…いい」
結局何も言えずに、落ち着かないまま右手で左手の指を意味もなく擦る。
ハルキは首を傾げて「ふうん」と言って、風呂場へ向かった。
(ミドリ経由でショウゴからどんなだったか聞けばいい事だしな)
ハルキはそんな事を思いながら風呂に入った。


おまけ

フォルクハルトが好きなのは、たぶん彼シャツとかだと思う


「それ、俺が昨日寝る前に着てたTシャッツだろ。なんで、そんなもん着てるんだ」
「起きた時手近にあったのがこれだけだったから。」
「ああ、ベッドの下に落ちてたのは、さっき洗濯したからな…」
(ハルキが俺の…服を……………)
「しかし、これ一枚だとスースーするな」
「は…履いてないのか?!それ一枚だけ?!!バッ…え…」
「だって、なかったから」
「誘ってるんじゃないなら、今すぐ自分の服を着ろ!!」
「…へいへい(めんどくさ)」

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