夜の出会い。③
僕は何時ものように夜中に家を抜け出しては
暗闇が広がる街に安心を求め彷徨っていた。
その時に出会ったのが地元の1つ歳上の先輩だった。
先輩も同じ境遇だったようで、自然と意気投合し
毎日一緒に待ち合わせしては遊ぶようになった。
その先輩は不登校で学校では顔を合わせた事はない。
何故か秘密の関係のような気がして楽しかった。
そして、人の温もりを初めて感じる事が出来たのだ。
笑顔がとても素敵で、本当の家族の様に話を聞いてくれた。
そうして過ごす内に、家族から受ける暴力に耐える力がついた。
だが、半年程経ったある日突然そんな日々に終わりが訪れる。
姉が持病の喘息で入院する事になった。
その頃には母親の彼氏は家を出ていた。
家に母親と二人。
地獄だと思った。
でも、姉の入院がきっかけで母親は夜の仕事に転職し昼は姉に付きっきりになると言うではないか。
僕は素直に喜んだ。
顔を合わす時間がなくなる。
即ち暴力を受ける事がないのだ。
だが、現実は違った。
母は夜から仕事に行き、夜中に泥酔状態で帰宅。そのまま僕を殴る。
それが1週間程続いたある日、顔や身体に痣があると学校から祖父母の方に連絡がいった。
迎えに来た祖父母の顔を見ると何故だか安心し、涙が出た。
僕は泣きながら祖父母に抱き付いた。
祖父母は話を聞いてくれたが、僕は母を庇った。
母の彼氏の話だけをした。
祖父母は泣きながら話を聞いてくれた。
「辛かったな。よう頑張った」
その言葉だけでも心が救われた気がした。
そして僕は祖父母の家で生活をする事になる。
祖父母は後日母親を呼び出した。
そして母親を罵倒した。
母が泣いてるのを見るのは父親にコップを投げつけられた時以来だ。
壁の端から僕が見てる事に気付いた母親は僕を鋭い眼差しで睨んでいた。
僕は凄く怖かった。
そして同時に何かを失った気がした。
そして恨めしそうに去っていく母の後ろ姿は
何故か切なく感じた。
僕には見向きもしなかったのに。
僕は車に乗り込む母を追い掛けた。
そして「ごめんなさい」と言った。
返ってきた言葉は「お前を信用するんじゃなかった」
だった。。