地獄と天国そして地獄⑥
母親には新しい彼氏が出来たらしい。
相手は某組織の枝の組長。いわゆるヤクザと言うやつらしい。
小学三年の僕でもわかる。
ヤクザとは怖い人だ。
幼いながらも僕は確信した。
「次こそ殺される」
だが、現実は違った。
その人は凄く優しくしてくれた。
初めて知らない男性に優しくしてもらえたが、この優しさがいつまで続くのかが不安の日々だった。
ただ、母の暴力は相変わらずだった。
数ヵ月が過ぎた頃、母は家に帰って来ない日が多くなった。
そのヤクザの彼氏の組事務所に入り浸っているからだ。
僕は嬉しかった。
姉と二人で協力し毎日雑事をこなした。
姉が料理、僕が家事。
最初は正直面倒臭かったし、姉の料理は不味かった。
だけど、毎日が楽しかった。幸せだと思えた。
そして僕はサッカーで出会った。
人生の転機だった。
母親や彼氏には相談出来なかったので、僕は祖父母に相談し半年後にサッカーを習わせてもらった。
この時初めて友達も出来た。
嬉しかった。今まで会話すらしたことがなかった人達と話すのは凄く新鮮だった。
ただ、僕は母親の事は聞かれても誰にも話さなかった。
いや、話せなかったが正しい。
周りが羨ましかった。
優しい母親に父親。僕とは違う家族。
その環境が僕の心を壊し始めたのだ。
僕は大好きなサッカーをしながら、裏で悪い友達とも遊ぶようになった。
親の見様見真似でタバコも吸い始めた。
この時人生で初めて人も殴った。
殴りすぎた僕の拳は皮が破れ、小指の骨が曲がる程だった。
僕は悪くない。
悪いのは親なのだ。
そう自分自身を正当化していった。。