見出し画像

鍼って効くの?

鍼治療は本当に効果があるのでしょうか?鍼治療の効果を疑っている方々が多いのも事実です。

私自身も鍼治療を始めた時点でその効果に疑問を持っていました。最初の10年間、鍼治療は実用性がないのではないかと思うほど、無効例が多すぎました。

それでも鍼治療を続ました。根気よく続け理由は2つあります。
1点目は私に鍼を薦めた医師が言ったことです。その先生は言ました。「どこの整形外科でも直せなかった俺の膝の痛みが、鍼で治ったんだよ」あの優秀な臨床医の先生が経験したことが、どのような膝の状態にどの鍼治療をしたから良くなったのか、知りたかったのです。その個人的な興味が強かったのです。

2つ目は西洋医学で治せない症状があまりにも多かったこと。上手く治せない症状に限って、西洋医学的に何種類かの治療の選択肢がありました。そして、あまり良くならない。もしかしたら、選択肢が多いということは、根本的な治療や病気の理解にたどり着いていないのかもしれません。その解決法を鍼治療に求めていました。

もちろん鍼治療の教科書を何十冊も購入し、独善に陥らないように努力しました。しかし残念ながら、なかなか良い結果にはたどり着けずにいました。数は少ないのですが、時に有効例もありましたが、まだまだ実践的ではありませんでした。

週2回の外来診療で鍼治療を併用する試行錯誤を10年以上続けました。

医師として鍼治療ができる最大メリットは患者さんが正直にその治療結果を教えてくれたことです。
「先生、全然効きません」
「先生、治療直後はよかったけど玄関でたらすぐ元に戻ったよ」
鍼で骨折の痛みが変化するかも試しました。当然患者さんからは疑いの目で見られました。しかし、鍼の治療効果をフィードバックできることは治療法を前進させるにあたって最も重要なデータです。

沢山の鍼治療無効例を見ることができました。これが私自身にとっての最大の財産です。どのような鍼が無効か、どのような発想で行う鍼が無効かを考えることができたのです。多分、私は世界で無効な鍼を数多く行った一人だと思います。

一般の鍼灸師はこれだけ失敗することは許されません。効果のない治療を数多く行ったら鍼灸師を廃業しなくてはならないし、治療家として信頼がなくなってしまいます。無効な結果を患者さんは教えてくれず、去っていってしまったりすれば、有効ではない鍼治療法をさらに続けてしまうかもしれません。

私は、数少ない有効例を寄せ集め、治療効果の機序を考え続けました。すると、今まで鍼の教科書が示す治療法とは別の考えが浮かんできました。それまでの経絡や鍼のツボという発想で鍼治療を行ってきましたが、経絡は昔の解剖の知識を元に考えられたものです。では、現代の解剖の知識に置き換えてみよるとどうだろう?ツボの細かな位置よりも、人体の解剖に置き換えて考える。私には外傷で四肢を手術し、脊椎・膝・股関節の手術で、人体の解剖を実地で見ている強みがあります。鍼治療すると危険な部位も容易に判断できます。

次に針の作用はツボではなく、筋・筋膜に作用するのではないかと考えを変えました。筋・筋膜や関節・靭帯には様々な反射が存在し筋肉は筋肉連鎖という形で運動を司る。筋・筋膜は筋肉連鎖の動力源であり、緊張を伝えるものです。そう考えると、鍼治療の有効例の症状は動作時痛である事が多い。筋肉を使った時に痛む。痛みの種類を考えると鍼治療すべき痛みのし種類が明らかになってきました。

痛風や打撲後など安静時に痛みがある場合には鎮痛剤が第一選択とする。一方、歩行・寝返り・起き上がり・階段昇降などでの痛みや、ストレッチなどで痛みが誘発された場合には、鍼治療を試みる。鍼の適応が定まってきました。


そんな中、腰痛を訴える20代の女性を治療することになりました。レントゲン・MRIで異常なく、どこ整形外科行っても動作での腰痛が治らない、薬や注射も効かない。原因がわからない。検査で異常がないので、誰も整形外科医は相手にしてくれない。こんなに腰が痛むのにどうすればいいのか分からない。ほぼパニック状態で来院されました。

診察をするとある鍼の治療点が思い浮かびました。それは痛む腰からは少し離れた場所でかつ若い女性にとっては治療点としてあまり好ましくない部位です。ですから、私は、その治療をすることを躊躇していました。

しかし患者さんは、それを察し。

「先生、なんでもいいから試してください。少しでも良くなりたいんです。」と仰ったのです。

その治療を試してみました。すると治療直後に腰の痛みは半減し、しかも、その効果は続いたのです。

 鍼治療は有効だと確信するようになりました。動作時痛に有効な事が多い。治療対象が明確になったのは大きな進歩です。これはいけると思いました。
 しかし、まだまだ、全ての症状に対応できているわけではない。単に鍼治療の一側面を覗いたにすぎず、分からないことが沢山ある。まだまだ道半ばです。

 

しかし、結論、鍼は効きます。


 日本での鍼治療法は様々で、その有効性を証明するのはとても難しい。鍼の有効性を第3者に理解してもらうのはとても難しいことです。

今、私の診療所に勤務している鍼灸師を指導しながら治療を続けています。ここの鍼灸師は私の鍼の治療効果に納得しながら、診療を行ってくれています。

いいなと思ったら応援しよう!