川柳四〇句 アセファルは頭でっかちだったとか+制作ノート【BFC5落選作品】
制作ノート2023/11
ブンゲイファイトクラブ5に応募してみたが、落選。
応募作品においては、システム(投げやり、偶然)と偏愛とをほどよく織り交ぜたのだが、再現性が高そうな方法になりうるだろうと感じたので、記録を残しうるし、残すかどうか迷った。
私は、偏愛する三音の二字熟語を40個だけ選んだ。
私は、偏愛する二字熟語を修飾する四音の言葉を40個だけ選んだ。概ね五十音の前半から選んだ。
三音と四音がランダムに結合された。すると40個の大きな頭部に相当する七つの音韻ができた。何個か、気に入らない頭部ができた。四音を別の脳みそに入れ替えた。
私は、偏愛する二音から四音のひらがなで表記しても差し支えのない語を40個だけ選んだ。ついで、40個の大きな頭部にランダムに結合させた。あまりにも気に入らないものは、頭部と短い首を縢る糸をほどいて、移植した。
偏愛の必然性に偶然性を加えて(とはいえ高々40しかない要素の範囲だが)作成した大きな頭部と首にふさわしい胴体を考え、追記した。七七五の韻律、頭部の大きな韻律、初句字余りの川柳ができた。
七七五の句は、七七五七七の短歌(塚本調といってもいい)がそれなりの数があることによっても自然で心地良い感じがするし、川柳における七七句(武玉川)に対して余分な五音をつける厚かましさも感じるし、とはいっても句跨りによって引き締まることもあれば、あるいは五七五に対する付句としての七七からさらに五音へとつながることにより、韻文の余白に書かれた蛇足の、あのなにか散文めいた肉体を思い起こさせ(これは読み手がというよりもむしろ、その肉体の縫い合わせる外科医が感じることであって、むろん、その患者は特に理由もなくそうなってしまった言葉(言葉自体が仮に現行の司法体系と手を結んでいたとしても、言葉がすぐに社会と接続できると考えたのでは、あまりに楽観的すぎるとも思うが)はわれわれの五感や、あるいは痛みによる空間の把握能力といった副次的な感覚と相似の能力をもっているわけではないのだが)、だからこそ腹から腸が露出しているとのこともさもありなんと悼むわけだが、するとアセファルは頭でっかちだったとか、というのもまた架空の隣人を偲ぶときにありうる脱線ではなかろうか。
……、胴体と足を見繕うのにあたって、自らのパロディにほとんど全ての残高を賭けてしまおうという意図などはなく、もしそのようなことが読み取られたとして、ただ大きな頭部と首に適切なものを用意してみたその当のものが、基本的に胴体とその付加物という点で類似しているといった弱い理由により、概ねパロディ的であるだろうということが、だれだれの何かを言わんとしようとする欲望に、ちょうどよく配膳されただけのことのように思われる。
川柳四〇句 アセファルは頭でっかちだったとか
明るい迂回そもそも地味な小瓶 辞書
瞬く前戯あくまで橋の旧い名で
親しい列挙さすが障子と言うべきか
鋭い遠慮およそ東経なん度だか
シュールな施錠いくらか糞を薙ぐ鰯
怪しい暴露かなり粘つく伝書鳩
冷たい浮上なすのオナホールも飽きた
恋しい網羅くどいレ点もみな埠頭
婀娜なる投資おろかおりおり光る馬場
賢い去勢ただし録音機はどかせ
汚い配布いくら土日を重ねても
手厚い矛盾あえて逆張り田植え厨
幼い記帳さほど興味もない時計
苦しい署名こそ筋肉の克明さ
小ぶりな叙述いかに画廊が寒くとも
寡作な追尾あと蕁麻疹まで九年
危うい木立きらりと閉じるごみの日は
簡易な癒着おもに「な」(禁止)が集った
さもしい左折むしろ立ち小便欲が
切ない密議さも濡れそうな黙秘権
祝いの言質いざ乗り込むと禁煙の
大きい担保あまり股間は痛くない
気高い板書さっと地獄へ柿の蔕
容易い施工から衣擦れの中毒者
あまねく留保しかと覚えた箱 手綱
涼しい飛散じきに家紋も思いつき
厳つい作為おなじ匂いの妹よ
尊い貯蓄おおくの肘を枕とし
素直な罷免いま傾けた急須かも
愛しい落馬いつも受信と遊んでた
四角い規制うんと犇めく受肉譚
基本の苦戦きっとカウンセリングだけ
弛まぬ仮眠あらかた時事も押さえたし
周知の便宜かつ馬鈴薯の憎き花
色めく呈示きっぱり餅と決別す
少ない複写がらんと落ちる樹脂 鋼
卑しい遮光しんと誤る浄化槽
乏しい墓穴かくも容易く花とヤる
重たい機運あいにく訳は源家
とろりと寝坊くまなく親の塗り絵棄て