DACI - 動かす人、決める人、貢献する人、そして、知らされるだけの人
こんにちは。LINEやSmartNewsで執行役員を務め、現在はTales & TokensやSekappyで会社経営をしている佐々木と申します。プロダクト開発や事業開発を専門としています。今回は「DACI」というフレームワークを使いこなすための考え方を紹介します。
DACIというフレームワークは、SmartNewsでの同僚・Jeannie Yangから教わったのですが、それを頻繁に使ううちに手に馴染んだ道具となりました。もうDACIを知らなかった頃には戻れない、とすら感じています。
この意思決定のフレームワークのポイントは、少し奇妙に聞こえるかもしれませんが、「知らされるだけの人」を決めることにあります。なぜか。それを説明します。
DriverとApproverの役割
まず「DACI」という言葉ですが、Driver / Approver / Contributors / Informed という4つの役割の頭文字をとったものです。意思決定を円滑に行うためにこれらの役割を担う人を明確にしておきましょう、というフレームワークです。
このうち、DriverとApproverを決めておくことの重要性はあらためて言われるまでもないかと思いますが、これが混乱する瞬間があります。たとえば、プロジェクトが個人レベルから組織レベルに変化する瞬間です。
個人レベルでやっているときには、DriverもApproverもContributorsも自分ひとりで完結できていたのが、組織レベルになった瞬間から「はい、あなたこれからDriverね」と役割の一部を手渡して自分がApproverにならなければいけなくなります。それを明確に行わずに、ApproverをしながらDriverを中途半端に兼ねてしまうと、Driverを任せた人物はその役割を十分に果たせなくなってしまいます。……と言われると心当たりがあるのではないでしょうか?
DriverとApproverは、プロジェクトの状況によって微妙に変化します。Approverの役割が分割されていくこともあるし、Driverが交代することもあります。だからこそ、いま誰がDriverでいま誰がApproverなのかを、プロジェクトメンバー全員にわかるように、常に書き出しておく必要があります。
あらためて言われるまでもないようなことだと思いますが、このDとAが明示されていない(あるいは、途中で加えられた変更が反映されていない)プロジェクトというのは、意外とたくさんあるものです。そのため、その重要性をくどいくらい何度でも強調しておきたいと思います。
* 以下の英文での説明は、What is the DACI Decision-Making Framework? に依りました。
ContributorsとInformedの役割
さて、ここからが私がこのフレームワークを特に気に入っている理由にあたる部分です。
Contributorsというのは、そのプロジェクトに貢献をお願いする人々です。Driverは、その人々の意見や提案をプロジェクトに取り込む責任があり、それによって意思決定の質が上がることをApproverは期待します。
そしてInformedですが、私の解釈を加えて表現すると「知らされるだけの人」です。プロジェクトに直接的に関わってはいない人々で、ただし、実行段階で彼女ら彼ら自身の業務に影響する可能性があるので、当事者性を与えるためにも何が意思決定されたかは事前に知らされる必要のある人々です。
Contributorsか、そうでないか。このCとIの線引が非常に重要です。
これを明確にしておかないと、人々のやる気と善意によってContributorsとInformedの役割が混乱し、Driverの意思決定の質が下がってしまう可能性があります。
具体的にいうと、Informedによる「こんなアイデアもありますよ?」という提案や「私は反対です(あるいは賛成です)」といった意見。これらは、やる気や善意によるものなので本当にありがたいのですが、ありがたいからといって、Driverはその意見や提案をプロジェクトに取り込む必要はありません。どのメンバーの知識や経験を意思決定に反映させるかは、DACIのフレームワークによってあらかじめデザインされています。Contributorsの意見や提案は取り込む必要がありますが、それとは対照的に、Informedにはその必要がありません。これが大事なポイントです。繰り返しになりますが、Informedからの意見も提案もあってよいですし、Driverはそれに耳を傾けることもあっていいんです。ただし、それを聞き入れる必要はありません。そういう考え方です。
とはいえ、面と向かって「あなたの話に耳は貸しますが、聞き入れないかもしれないので気を悪くしないでください」とは言いづらいですよね。そういうときに、このフレームワークが便利なんです。あなた(Informed)の意見や提案を求めていないのは、あなたのことが個人的に嫌いなわけでも、やる気や善意を評価してないのでもなく、意思決定のフレームワークとして事前に決めているものなんです。でも、実行段階ではぜひ協力を仰ぎたいので、決定事項は早めにお伝えしますね。と、ここまで説明する必要はないと思いますが、Driverの人はこのように考えることで心理的な負担を減らすことができます。誰に意見を求めるべきで、誰の意見は聞かなくてもよいのか、これがわかっていると、意思決定のマネジメントはかなりやりやすくなります。
なお一番のアンチパターンは「みんなの意見や提案を集めてなにも決まらない、あるいは質の悪い決定に落ち着いてしまう」という状態です。DACIを明確に決めておくことで、それが避けられます。
下記にCとIの説明を引用します。あわせてご覧ください。
以上、DとAとCはもちろんですが、「知らされるだけの人」まではっきりさせておくことで意思決定の質を向上させられるというフレームワークの紹介でした。おすすめします。
追記
このnoteを公開してから3年が経ちますが、ずっと継続的に読まれ続けているようです。ありがとうございます。私も引き続き、いろんな場面でこのフレームワークを使っています。
今回、具体的な使用例を有料パートとしてあらたに書き加えることにしました。大事なことはすべて無料パートに書いてありますが、もし実践の事例にご興味ある場合は、続きもご覧ください。
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