無題3

I think



僕は考える。

君を連れていきたい、場所のことを。


そこは、何にもしなくても、おなか一杯ご飯が食べられるところ。

そこは、何にもしなくても、布団でぐっすり眠ることのできるところ。

そこは、あったかくて、ふわふわしてて、痛いことも、苦しいこともない。

そこは、とにかく、行ってみなくちゃわからないけれど――素敵なところだ。


それで、君が好きな、蒲公英の花がめいいっぱい咲いてるんだ。

それから、君が絵本でしか知らない薔薇もあるんだ。

そうして、どれだけ花を摘んでも怒られない。

おまけに、ほっぺたがおちそうな甘いお菓子も出るんだ。

 それから、お父さんも――お父さんがどんなものか、僕は知らないけれど――いるんだ。

 となりにはお母さんもいて、僕のほっぺをぶったりしないし、きみに包丁も突き付けない。

君はいつだって、笑っていなくたっていい。

悲しい時には泣いてもいいし、悔しい時には怒ってもいい。

病気の時には熱を出していいし、おかゆをねだってもいい。

そうして、君が君が苦しかったことや、君にとってのあたりまえを言っても。

 ちっとも、みんな、かわいそうだといわないし、そんなのおかしいって言わないんだ。

 ただ、頑張ったねって言って、ぎゅうってハグしてくれるし、生まれてきてくれてありがとうってたくさん言ってもらえるんだ。

 それからきっと、頭だって撫でてもらえるんだ。

そのあとで、ぎゅってはぐして、大好きって言ってもらえるんだ。


そこじゃ、誰も君に石を投げない。

そこじゃ、誰も君を縛り付けない。

そこじゃ、誰も君を焔であぶらない。


 そこじゃ、誰もが、君がきちんと帰ってこれるまでじっと待っててくれるんだ。

 もしも迷子になっても、探して、少し怒って、無事でよかったって抱きしめてくれるんだ。

 誰も探しに来てくれなかったり、ひたすら罵られたりはしないんだ。

 土管の隅っこで、足を抱えて、一人で泣いていなくたっていいんだ。


どんなわがままを言ってもいいんだ。

くさはらの上を歩いてみたいとか。

つめたい川に足を浸してみたいとか。

明日のご飯はカレーがいいとか。

そんなわがままを、いっても怒られないんだ。


いくらでも、好きなだけ歌っていいんだ。

いくらでも、好きなだけ喋ってもいいんだ。

――あんまり夜遅くは、だめかもしれないけど。


でも、もしも間違えても、怒らないで、静かに教えてくれるとこなんだ。

本当に危ない時よりほかは、みんな、怒らないでいてくれるんだ。


そこに行けば、僕ら、幸せになれるんだ。

そうだよ、そこはすてきなとこなんだ。

行ってみなきゃわからないけれど、確かに、素敵なとこなんだ。

少なくとも、ここよりはずっとずっといいところなんだ。


そんなとこに、きみをつれてきたい。

そんなとこに、君を連れていきたかった。

そんなとこが、あれば、よかったのになぁ

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