芽吹かない花

 

 青い目が欲しい そう言って笑った三つ編みのレディ

 やせっぽっちな身体の女の子

 泣きそうな顔でうずくまっていたあの子はいない いないの

 

 叫んでいたのに 泣きそうな顔で 足掻くように もがくように叫んでた

 「ねぇどこにいけばいいの」って 泣き叫んでたのに

 

誰もが君を追い落とした 不幸の身代わりに 踏み台にして

そうしなきゃ生きていけなかったから 石を投げた

寂しがり屋のレディ 真っ白な肌に焦がれて 

青い眼が欲しい そう言って囀った黒い目の女の子

君のままでいいよって、声は届かなかった


 治してもらえない虫歯 大事にしてもらえない身体

 抱きしめられたはずなのに 抱きしめ方を知らないの

 愛を与えられたはずなのに それを咀嚼できなかった

 やせっぽっちの身体で 君は寂しさを縁取った

 少しでも幸せに見えるよう 青い目を願った


 前歯を立てられた幼い四肢は君の嗚咽

 君はレディ 僕のレディ 

 芽吹かない花の少女 君は三つ編みのレディ

 「誰も悪くなかったのよ」 って言った語り部 

 「ちがう 誰も彼もが悪かった」って叫ぶ声 

 誰もが悪いから さばく人なんていなかった  

 そうさ 罪のない人なんていないよ 

 優しい眼差しの虚像 鏡の中で咲き誇った彼女 

 だけどレディ ほんとの君は芽吹けない花 枯らされてしまった花 

 

 誰かの醜さの上でしか咲けないのなら そんな美しさはいらない

 僕は僕のままで 君は君のままで

 君はきれいな女の子 赤金色の肌の女の子 優しい黒い目の女の子

 ぼくはそれでいいの それでいいの それでよかったのに、ねぇ


 生ぬるいジンを注がれて育てられてた 痩せこけた横丁の裏っかわ

 夢を叶えてくれるランプなんて無いから 神父様に祈った 

 青い眼が欲しいのって そう言ってすがりついた黒い目のレディ

 

 誰も抱きしめてくれなかった 抱きしめるすべを知らなかった

 愛という言葉ひとつさえ僕らのものじゃなかった

 心のままに歌おう 叫ぶように 泣きわめくように

 言葉をどれだけ尽くすより 借り物の言葉で飾り立てるより


 ただ歌おう それでいいの それで伝わる 伝わるよ

 それでいいよ いいの 万の言葉よりも大切な旋律で 

 僕らのビートに乗せて ただ旋律を叫べ 咲けべ


 ああ、君は黒い目の女の子

 僕の愛する女の子 小さな花

 抱きしめる腕が届くように

 張り裂けるほどにうたうよ

 ただ旋律を 咲けべ 咲けべ



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