無花果
愛しい人よ 僕の愛する君よ
どうか赦してください
君に花を与えぬことを
僕が鏡を作らぬことを
僕とてあなたはいとおしい
ましてあなたとつくる鏡であればなおのこと
されどもそれはゆるされていないのです
愛しい人よ、僕を救った君よ
どうか恨んでくださるな
君に鏡を残さずに
言葉のみをとどめることを
僕とてあなたがいとおしい
されどあなたに遺すは言葉だけ
それしかのこせぬ このみじめさよ
愛しい人よ 僕を愛した君よ
どうかわかってほしいのです
君を愛していないのではないことを
僕が君との花を咲かさぬわけを
僕とてあなたがいとおしい
でなければ言葉を残すわけもない
だから咎めてくださるな 何も残さぬ、この罪を
花も咲かせぬ、この無花果を