無糖は大人になってから
朝がくる、何だかいつもより清々しい気分で目が覚める。
もう明るくなった空を見て、テレビを付ける。
テレビのニュースの内容は悲しいものもあったが比較的良いニュースも多い、悪ない。とよく分からない余韻に浸る。6時に差し掛かる頃に始まった星座占いを見る。
運勢は微妙‥えーちょっと嫌だなぁ、と思う。
学生時代早起きが苦手だったわたしは、朝の星占いを見る為だけに、起きるのを頑張っていたことを思い出した。
今日の占い、結果は良くない。
今日は穏やかで有りますようにと、テレビに念じて二度寝に入る。
しかし覚醒してしまったのか、2時間くらい目を閉じたまま睡眠しなさいと脳に促すが上手くいかない。わたし二度寝しときたいんだよな、頼むよ‥と改め脳に語りかけ、睡眠スイッチを待ったが一向に入らないので、今度は自力で一生懸命に精神を統一してみる。起きてしまえば良さそうだけど、ここまで来ると意地になり闇雲に葛藤する。身体も興奮状態で暑くなってきたので余計に眠れなくなってしまった。
まあでも無茶苦茶頑張ったので、気が付くと昼の12時を回っていて、目が覚める。途中から記憶が消えたが普通に寝れてた。良かった。寝ている最中も夢で何かと葛藤していたような気がする。無駄に体力を使ったな、そそくさと起き上がる。
脱力のまま洗面台に向かい顔を洗う、口角を上げてみる。キモい、真顔に戻り鏡越しの自分にもっと良い感じになりなさい、と無言で睨み付ける。
何これ、と我に戻り洗面所を後にする。
好きなアーティストの歌をBGMに気を取り直して支度をする。コーヒー入りマグを片手に、鼻歌程度にハモっていたつもりが終盤には、ほぼがっつり歌っていた。マンション住みなので声はかすかに出ている程度で息を吐き出すように体力を使って歌っていたので、ここでまた無駄な疲れの蓄積を感じた。冷めたコーヒーを飲み切ってから甘いコーヒー最高と、心で呟く。
そんな良い気分で家を出て、外の気温が朝のニュース通りの20度越えの体感でなんだか嬉しい。流石に薄着すぎたかな、と春気分で選んだ服装に不安が歩数と比例して大きくなっていく。昼間は軽めの羽織りで丁度良いが、夜はまだ結構冷えるかもなと、その辺のこと無限ループに考えていたら瞬間で駅に着いていた。
今日は夕方からの出勤なので電車も空いていて、席に座るとまた、ふっと睡魔が襲う。どんだけ眠いねん、と心でツッコミながら眠りに落ち、渋谷駅で停車した瞬間に運良く目覚めた。
電車を乗り換え、職場の最寄り駅から、春の陽気にほだされて職場まで歩く。ヘナヘナになる。すれ違う人たちを見て春も悪ないな、としみじみ思う。
ヘナヘナどころか、調子に乗って歩き過ぎた為ヘロヘロになり歩行速度が酷く落ちたので、途中からアップテンポのロックにシフトチェンジして早歩きする。
ハイテンポに急かされ意味も無く慌てて職場に着く。職場目前でテンションのギア調整をしている最中、ワイヤレスイヤフォンのBluetoothが切れ、そこに居合わせた隣の部署の女の子にスマホからダダ漏れた邦楽ロックを聴かれる。赤面しやたら大きな声で挨拶して、落ち込む。
成る程このことかと、占いのことを思い出し、これ以上何かあったら嫌だなとかっちり構えて出勤してみたもののその後、先程の用な恐ろしい事は特になく、平穏に過ごすことができた。
5時間だけの仕事をやり遂げて、(大したことはやっていない。)なんだぁ、全然平気じゃん。と何となく、心の中だけで感想を言ってみた。
肺の空気をこれでもかというくらい外に吐き出してからお腹と背中がくっ付くくらい息を吸い込んだ。深呼吸しようと思ったけど通常と逆の動作をしてしまったので、残念ながら途中で諦めた。
帰りの電車も行き同様、運良く座れたので本を読もうかと思ったが、朝昼に無駄な体力を使ってしまった為か集中力が皆無だったので、開いた本を閉じたりまた開いて閉じたりしていたら、対面席のサラリーマンのおじさんと目があったのでそのまま視線をおじさん横の広告にスライドして誤魔化した。
そのまま永遠にぼうっと広告を見つめていたら最寄りの駅に着いた。
改札を出て、やっぱり夜は少し冷えるなぁと朝の迷いに答えを出してから明日の服装を考える。
星は全然なくて真っ黒の空を見ながら真っ直ぐ家に帰る。夜でも歩いていると徐々に身体は温かくなってくる。洋服で体温調節をする人間に生まれた自分が今日だけは哀れに思えた。
なんだか虚しくなってきたのでちょっぴり泣いた。その涙の冷たさで、一瞬で我に帰る。自分自身に意味不明、と頭にチョップしているシーンを想像してみたら、さらに意味不明で収拾付かなくなってしまった。
明日から半年くらい星占いが全部良いといいな、とがむしゃらに我儘を言ってみる。
とりあえず明日の星占いが良ければ良いかな。
おやすみなさい。